2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代的多元主義状況における社会と<性別制度>の関係についての規範理論的探究
Project/Area Number |
22530514
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
金野 美奈子 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (20346232)
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Keywords | 公共社会学 / 規範理論 / 多元主義 / 性別 / ロールズ / 公共的理性 |
Research Abstract |
本研究にとって理論的出発点であるJ.Rawlsの政治的リベラリズム、及びその中心的な理念である「公共的理性」について批判的な検討を行い、Rawlsの政治的リベラリズムは多元主義の下での社会秩序構想の探究という哲学的リベラリズムの企図を引き継ぎながらも、社会学的規範理論と位置づけうるものであることを明らかにした。Rawlsの構想において、政治は共同性を実現する場のひとつと位置づけられ、既存の意味世界を前提にしつつそれを超えて創発される規範的意味世界として探究される。Rawlsの構想を社会学的と呼びうるものとしているのはとくに次の2点である。第1に、多元的社会における社会的共通構想にかかわる政治という領域が、たんに中立性などの手続き的価値の領域としてではなく、一定の「われわれ」の視点から「われわれの理念」として同定されうるような具体的内容(フェアな社会的協働、自由で平等な市民の概念)を備えた理念的社会像の一部分として構想されている点である。第2に、多元的包括的教義の間での共通構想を支えうるものとしての政治的価値を、理念としてなにがしかの位置を部分的・萌芽的なものであれ現実社会においてすでに占めているような諸価値の中から選びとられ提示されるものと、明示的に位置づけている点である。このようなRawlsの構想は、何らかの超越的視点からではなく社会内在的な視点からよりよい共同性のあり方を提示しようとする社会学的規範理論(公共社会学)が参照しうる、ひとつの重要な枠組みを提供していると考えられる。
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