2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530522
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
斉藤 日出治 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (10186950)
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Keywords | 紀州鉱山 / 海南島 / 歴史の集合的記憶 / 歴史認識 / 植民地主義 / 侵略責任 / 市民社会 |
Research Abstract |
1紀州鉱山については、韓国の慶尚北道の道議会議員による紀州鉱山への現地訪問により、韓国との共同調査のネットワークを創出することができ、朝鮮人労働者の強制労働の実態についてのトランスナショナルな共同調査の糸口をつけることができた。 2海南島については、 1)2011年10月末-11月初旬、および2012年3月の現地訪問により、那大、屯昌、白沙における日本軍施設(望楼、軍営、慰安所など)の跡、アヘン畑の場所などを特定し、那大では村民のほとんどが殺害された村における若者、女性の殺害状況、屯昌における水晶鉱山での強制労働の実態、白沙における黎族の村における日本軍の食糧略奪や虐殺の実態をあきらかにすることができた。 2)海南師範学校に派遣され、日本語教師になった3名の日本人に面会し、教師になった動機や海南島にわたった経緯、海南島における生活などを聞き取り、当時の日軍人日本人の海南島における生活の実態を明らかにすることができた。 3)日本軍海南島占領下の海南島でおこなわれた数多くの学術調査研究(土壌、森林、河川、農業、林業、水産業、畜産業、食生活、植物、動物、鉱物資源などに関する)の資料を収集し、これらの研究に取り組む日本人研究者のまなざしにはらまれる無自覚の植民地意識を究明した。 3戦後のドイツ市民社会が自ら生み出したナチスと東ドイツの二つの独裁制の歴史に関する集合的記憶を構築する作業に取り組んできたこと、それに比較して、戦後日本の市民社会が戦前の植民地主義の歴史についての記憶を封じ込めることによって開発主義と植民地主義を国内で再生産することになった過程を究明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日本軍占領下の海南島における学術調査研究の実態や、日本人教師の海南島派遣の実態など、当初予定していなかった調査研究を進めることができた。また戦後日本の歴史認識において、植民地主義や侵略犯罪を忘却した歴史の集合記憶が戦後日本の社会形成にいかに重大な作用を及ぼしているかについても明確にすることができた。 研究協力者との共編著『海南島近現代史研究(1939-1945)』(400頁)は原稿がすでに出来上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
海南島の現地調査の報告が遅れているので、できるだけ早く調査報告を公表していきたい。2011年2-3月についてはすでに原稿の投稿が完了し、2011年10-11月、および2012年3月の現地調査報告についても、今年度中に経済論集に投稿の予定で作業を進めている。 また3年目の2012年度についても、海南島の現地調査活動を予定している。被害の体験者が高齢化して聞き取りが困難になっているので、早急に聞き取り調査を実施することが求められている。
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Research Products
(4 results)