2011 Fiscal Year Annual Research Report
タイにおける住民参加型社会福祉制度に関する実証的研究
Project/Area Number |
22530534
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 康行 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40170790)
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Keywords | タイ農村 / 医療福祉 / 村落保健ボランティア / 高齢者社会福祉振興協会 / 高齢者 / 保健所 / 市民社会 |
Research Abstract |
今年度は、北タイ農村のひとつの地区にはいりフィールドワークをおこなった。はじめに、村落の基礎的な構成(村の役員、組の編成、各種団体など)について聞き取り調査をおこない、そのうえで村落保健ボランティアの活動状況、保健所の取り組みなどを聞き取り調査と資料収集をおこなった。隣組ごとに遺跡の清掃活動をしており、地域のまとまりがよい村であった。行政村ごとに百万バーツが提供されるのに伴い、東北タイの農村では行政村の分裂が数多く見られたが、この村は分裂しなかったことがそれを物語っている。 北タイ農村を調査した中でもっとも重要な事柄は、高齢者のみでなく住民一般が公的な団体の基金に加入していることである。これは、奨学金の給付や入院費用、死亡時の一時金、妊娠や出産での一時金など、チェンマイ県内だけでおこなわれている公共の社会保障である。とはいえ、チェンマイ県でも加入していない農村地区もある。加入者は1日1バーツを支払い、幅広い保障を受けることができる。この団体は1955年に設立され、現在の名称はチェンマイ・バーン・タムパコン高齢者社会福祉振興協会(sun phat thana kan chat sawadikan sangkom phu sun ayu ban tham pakon chiang mai)という基金である。また、1980年に設立された北タイ高齢者の福祉基金(munithi sonkhro kon chara phak nua)というNGOの事務所も施設内に同居し、協力して事業を推進している。一般的には、農業従事者は、民間の保険か、あるいは農業農協銀行に入り死亡時に資金をもらう銀行内の葬式組に入ることが多い。それに対して、この基金の場合は、葬式のみならず妊娠での入院や学生への奨学金の給付なども支払われ、加入するメリットは非常に大きい。この基金がタイにおける先進的な扶助であることは間違いない。しかし、タイ国全体の一部の地域だけがこの基金に加入しているにすぎないことから、こうした基金の試みが全国的に拡大するかどうか、注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は東北タイ農村、今年度は北タイ農村でそれぞれ調査をし、基礎的でなおかつ重要なデータを入手してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、北タイの郡中心部で同様の調査をおこない、比較可能なデータの収集に努める。2013年の最終年は、東北タイの郡中心部で調査をおこない、4地区のデータを比較して考察する予定である。
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