2012 Fiscal Year Annual Research Report
タイにおける住民参加型社会福祉制度に関する実証的研究
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22530534
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 康行 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40170790)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | タイ農村 / 高齢者福祉 / 村落保健ボランティア / 福祉社会形成 / 1日1バーツ / 村落の強固さ |
Research Abstract |
今年度は、北タイ農村の一地区にはいりフィールドワークをおこなった。村落構造(村の役員、組の編成)、村落内組織(米銀行、百万バーツ基金など)、村落保健ボランティアの活動状況、保健所の取り組み、さらに福祉基金の仕組みなどについて聞き取り調査と資料収集をおこなった。研究の目的は、村落保健ボランティアの活動を促進する要因を比較考察することである。これまでの暫定的な結論としては、村長が活動に理解をもっていることや福祉基金があること、村落保健ボランティアが各自の親族関係を活用して活動することなどが見いだされている。 これまでの調査のなかで北タイ農村には、高齢者のみでなく住民一般が加入できる公共の福祉基金のひとつである「1日1バーツ」があることが分かった。これは全国的に展開されている「1日1バーツ」基金と基本的には同じものであった。つまり、加入者は1日1バーツを支払い、奨学金の給付や入院費用、死亡時の一時金、出産での一時金などが支給される点は同じであった。しかし、給付内容の点で相違する点もあった。 村落保健ボランティアの活動を促進する要因を比較研究してきたが、それとの関係で「1日1バーツ」基金が村落保健ボランティアの活動を促進する重要な要因のひとつである可能性があると考えられた。政府はこの福祉基金を浸透させるため資金援助をし普及に努めていることもあり、福祉基金の規模が大きく給付金額が大きいという事情が普及している背景にある。 福祉基金を比較考察し基金への加入を促進する要因を分析する意義があることが分かったので、北タイと東北タイの両方で村落保健ボランティアのみならず、「1日1バーツ」福祉基金に関するデータ収集をしてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2010年度から12年度にかけて東北タイと北タイで調査をおこない、村落保健ボランティアの活動に関係するデータ、および村落保健ボランティアを取り巻く村落構造および村落内組織に関するデータの収集をしてきた。さらに、福祉基金が調査した農村にあった結果、村落保健ボランティア活動を促進する要因にかんして、福祉基金を含めて村落を取り巻く社会環境のデータを収集することができた。村落保健ボランティア活動を促進する要因について、村落内組織や農村を取り巻く条件のみならず、導入されている福祉基金制度の仕組みなどもあわせて比較考察できた。
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Strategy for Future Research Activity |
主として東北タイの農村で補充調査をおこない予定していた調査を終了し、少なくとも調査対象地4カ所の調査データを踏まえて、村落保健ボランティア活動を促進する要因を比較考察する。調査をとおして東北タイと北タイの双方のなかで「1日1バーツ」という福祉基金があることが確認されたため、村落保健ボランティアの活動のほかに、この「1日1バーツ」福祉基金を比較研究し、加入を促進する要因の研究をすることが重要である。今後、村落保健ボランティアの活動の促進要因分析の一環として、村落内組織のみならず地域ごとに福祉基金の具体的な仕組みを比較検討する予定である。
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