2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530547
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
渡邉 伸一 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (70270139)
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Keywords | 公害問題 / 関サバ・関アジ / 水産物のブランド化 |
Research Abstract |
大分県佐賀関(大分市)と言えば、「関アジ・関サバ」のブランド化で有名である。1990年代から本格化する佐賀関漁協による大衆漁のブランド化の取り組みは、今日各地で試みられている地域ブランド化の先駆けとしてだけでなく、一本釣りという持続可能な漁業による地域振興の成功例としても評価が高い。しかし他方で、1970年代の佐賀関は、公害反対運動で有名であった。大分県は、1970年に新産業都市第2期計画を策定、そこでは、佐賀関海域を工場用地として埋め立てる計画がうたわれていたのだが、佐賀関の漁業者は、この計画への反対運動を展開し、77年には計画の取消を求める行政訴訟を起こすなどしている。佐賀関で大衆漁のブランド化がなぜ成功したかについては、漁業経済学による研究などが存在するが、漁業者による反公害の取り組みと関連づけて考察したものは皆無であった。 これらの既存研究は、大衆魚ブランド化の原点が、佐賀関漁協が1988年に開始した魚の「買取販売事業」にあったとする点で共通している。この事業は、漁協が直接に漁業者から魚を買い取って販売もするという事業で、漁協の取り組みとしては、当時極めて珍しかった。それは、リスクを伴うからで、第1に、組合に損失が出る可能性があること、第2に、漁協職員の労働的な負担が増えることである。なぜそこまでして、1988年という年にこの事業に取り組んだのか。本研究では、70年代の公害紛争をめぐって、漁協はどう対応したのか、漁協内部にどういう対立があったのか、漁協と行政との関係はどのようなものであったのか、という構造分析によって、漁協の公害経験と「買取販売事業」の開始とは密接なかかわりがあった、との知見を得た。次年度はさらなる調査によって、そのかかわりの論理をより詳細に明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
聞き取り調査においては、希望する被調査者からインタビューの承諾が得られるか、という点が最も重要となるが、これまでは、計画した全ての方々から理解と協力が得られていることが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の深まりとともに、聞き取り調査が必要だと考えられる被調査者の人数が増えてきた。限りある研究費を有効に使用するためには、調査の優先順位を適切につけて、研究を進めていく必要があると認識している。
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