2011 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・コンフリクト国における難民の帰還と社会統合の方途
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22530549
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
材木 和雄 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (70215929)
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Keywords | クロアチア / セルビア人難民 / 帰還 |
Research Abstract |
本年度はクロアチアにおけるセルビア人難民の帰還と再統合の現況を分析した。その結果は次の通り。 1.クロアチアの中でセルビア人の帰還者がもっとも多い地域はかつてセルビア人の集中的な居住地域であった地域である。このうち、農山村地域ではセルビア人社会が維持される可能性は小さい。ここで常時居住する住民の大多数は高齢者であり、一人暮らしも多く、近い将来には集落そのものが消滅していくことが予見される。 2.しかし、都市部ではセルビア人社会が維持される可能性は残されている。ここでは住宅の再建が完了したとすれば、雇用・仕事を確保できれば帰還者は生活を再建することができる。しかし、セルビア人帰還者にとって雇用・仕事の確保はもっとも難しい問題である。 3.しかし、問題状況を改善する重要なファクターを見出した。それは政治的影響力である。セルビア人が一定の政治的影響力をもつ地域ではそうでない地域に比べてセルビア人の雇用機会は大きくなる。具体的には独立民主セルビア人党の影響力の大きさに依存している。 4.クロアチアにおけるセルビア人の再統合の実現状況は全体的にはまだら模様である。一部にほぼ完全に再統合を果たした人もいるが、その一方でクロアチア社会への再統合を実感できない人も多数いる。その主要な原因の一つは就職難である。 5.問題状況の改善のためには第一に就業機会が全体的に拡大することが必要である。しかし、全体的な就業機会が拡大するためにはこの国の経済が成長軌道に乗り、セルビア人帰還者が多数居住する地方社会に投資と開発が進む必要がある。その上で第二に採用慣行・採用方法の変化が求められる。現在のように政党所属と民族所属が重視されるのではなく、求職者の専門的知識と資質によって採否が決定されなければならない。そのためには客観性の高い選抜方法が導入され、選考過程の公平性と透明性を担保する法規制が必要だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロアチアにおける調査を完了し、難民の帰還と再統合の現況を分析し、『問題の所在と問題解決のための課題を明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおける調査を完了し、マイノリティの帰還の再統合の現況を分析することである。ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおける調査の拠点地域は、サラエヴォ、バーニャ・ルーカ、モスタールであるが、さらにドゥルヴァールを追加する可能性を探っている。
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Research Products
(1 results)