2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530556
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
稲葉 昭英 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (30213119)
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Keywords | 貧困 / ひとり親 / ライフコース / 低所得 / 家族構造 / 母子世帯 |
Research Abstract |
本年度は計画通り、既存研究のレビューを中心に研究を実施した。Journal of Marriage and Family,American Sociological Reviewなどの家族構造とライフコースに関する研究、貧困に関する研究のレビューを行った。アメリカでは離別母子世帯の研究が従来中心であったが、現在は未婚母子世帯がより深刻な問題になりつつある。また、母子世帯以上に母子世帯・二人親世帯を繰り返す(つまり母親の再婚などが頻繁におこる世帯)のほうが、子どもの発達への影響は望ましくないようだ。 また、ルイジアナ州立大学講師である堀真紀子より、最新の階層線形モデル(HLM)を用いた研究についてのレクチャーを受けた。階層線形モデルはミクロレベル変数に対するマクロレベル変数の文脈効果、つまり交互作用効果を検出するモデルであるが、ともすればモデルを複雑化する側面があり、文脈効果の理論的意義が決定的に重要になる。現実にはこの文脈効果に関して理論的に注目すべき研究はまだまだ少数であるようだ。 本研究では研究協力者として余田翔平(東北大学大学院)、三輪清子(首都大学東京大学院)などの参加も得た。両名は、日本社会学会、日本社会福祉学会においてそれぞれ自由報告を申し込み、余田は父不在家庭出身者のライフコースの計量的研究を、三輪は社会的養護を要する子どもたちの施設委託と里親委託の関連についての計量的研究を報告した。いずれも、人生の早期の段階で貧困・低所得を経験する人たちのライフコースを社会保障制度と対応させて論じたものであり、今後の展開が期待される。
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