2010 Fiscal Year Annual Research Report
ダルクにおける薬物依存からの『回復』経験のエスノグラフィ
Project/Area Number |
22530566
|
Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
南 保輔 成城大学, 文芸学部, 教授 (10266207)
|
Keywords | 社会化 / 「変容」 / セルフヘルプグループ / パネルインタヴュー / 参与観察 |
Research Abstract |
本研究課題は,薬物依存からの自助的回復組織であるダルクのエスノグラフィ研究の実施を目的とするものだが,首都圏にあるAダルクのスタッフを成城大学に招いてのディスカッションを実施した。また,先行研究の検討を進めた。その結果,薬物依存からの「回復」経験についてはいまだ解明されていない点が多々あることが判明した。先行研究の多くは縮約された数量データを統計として集約したかたちで結果を提示しており,日常場面における「回復」経験がどのようなものであるかを直接観察に基づいて調査し社会学的な観点から検討したものは見当たらない。Aダルクスタッフからの聞き取りでは,メンバーの「回復」は平均1年前後の入寮期間中に限定されるものではなく,退寮後もNAミーティングやダルク行事への参加を通じて維持される「仲間」との支え合いが重要なものであることがうかがわれた。理論的側面からの検討としては,レイブとウェンガーによる『状況に埋め込まれた学習』とベイトソンの「『自己』なるもののサイバネティクス」とを取り上げた。前者の「実践共同体における徒弟の学び」という視点や後者の「自己コントロール」という切り口は有望であろうとの感触を得た。 年明けの1月には,2011年度以降に実施する観察調査に向け,Aダルクを訪問しスタッフとの顔合わせおよび施設内見学を行った。倫理問題などに関わる調査ガイドラインの原案について意見を交換し,その後のやりとりを通じて年度末までにガイドラインを完成させAダルク側の了解も得た。観察調査に取りかかる準備が整った。
|