2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダルクにおける薬物依存からの『回復』経験のエスノグラフィ
Project/Area Number |
22530566
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
南 保輔 成城大学, 文芸学部, 教授 (10266207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 秀幸 四天王寺大学, 人文社会学部, 講師 (00611360)
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Keywords | 社会化 / 変容 / セルフヘルプグループ / パネルインタヴュー / 参与観察 |
Research Abstract |
本研究課題は,薬物依存からの自助的回復組織であるダルクのエスノグラフィ研究の実施を目的とするものである。首都圏にあるAダルクとBダルクを月に1回程度訪問し,ミーティング参観とインタヴュー調査を行った。インタヴューは,クライエントであるメンバーとスタッフを対象としたが,特に,メンバーへのパネルインタヴューは9人の協力者が得られ,8回にわたって話を聞くことができた人もいた。基本的に,インタヴュー録音はアルバイトに依頼して文字化し,研究会メンバーで共有している。 メンバーによる研究会は1年間で13回行った。パネルインタヴューのデータを検討するデータセッションを基本とし,文献検討も行った。例を挙げると次の2冊である:芳賀・菊地『仏のまなざし、読みかえられる自己:回心のミクロ社会学』;ギデンズ『モダニティと自己アイデンティティ』。 また,2月には関西にある2つのダルク,CダルクとDダルクを訪問調査した。C・Dダルクは、A・Bダルクとは異なるタイプの依存症者を対象として、異なる支援を実施しているダルクである。A・Bダルクとの比較分析に向けた基礎的データを収集することができた。 ダルクは,NA(ナルコティクス・アノニマス)ミーティングを回復のためのプログラムに取り入れている。その12ステップや「今日一日」というスローガンを依存症者がどのように理解し取り入れていくかが,「回復」にとって重要なものである様相が明らかとなってきた。トピックを絞り込んで,論文化の作業に取りかかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の(1)と(2)に関しては上記の区分があてはまる。最大の理由は,調査対象のA・Bダルクより全面的な協力が得られたことである。また,研究協力者の貢献も大きかった。次年度以降の本格的な調査データ整理・分析に向けて、極めて広範にわたる貴重な調査データを収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールド調査を継続し,観察とインタヴューを行う。これまでの調査を通じて「回復」経験が多様で複合的なものであるということがわかってきた。そのため,研究目的(2)の追求を最優先していく。
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