2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530570
|
Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
染谷 俶子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (60154720)
|
Keywords | 老年者社会学 / 高齢者扶養 / 老後の自立 / 介護の社会化 / 人口高齢化 |
Research Abstract |
近年、近代化の著しいアジア地域において、伝統的な家族または親族による老親扶養の意識とその形態が変貌しつつある。老親扶養は子供の義務であり、またアジアの伝統文化である、という価値観が存在していた。日本では、社会と家族形態の変貌に伴い、高齢者の有料居住施設の需要も高まっている。そこで著しく変貌するアジア諸国においても、時間差をもって、日本が歩んだ道をたどっていくのか。その実態を検証することが本研究の目的である。 平成23年度の調査対象地は韓国の首都ソウルであった。韓国は伝統的に儒教思想の強い国である。しかし伝統的な親孝行の姿勢とその実践は、少なからず社会変動に影響されている。近年の目覚ましい近代化に伴い、伝統的な老親扶養意識とその形態にも変化が生じている。昨年度の調査から見出された知見をまとめると、以下のようである。 第1に、近年ソウル市および近郊において、有料の高齢者居住施設が増加している。入居者へのインタビューから、「子供の負担になりたくない」「一度息子家族と同居したが、うまくいかず、ここに来た」 「子供は近くに住んでいない」など、が代表的な理由であった。 第2には、入居者は、費用負担のできる経済的にゆとりのある人であった。公務員や教員で実質的な年金のある人、または、こどもが入居費用を負担している人が中心であった。 第3には、大半の入居者は、最期をこのようなところで暮らすと予期していなかった。また、子供と同居して扶養してもらえなかったことは予定外であったものの、費用がかかり、誰もが入居できない生活を得ていることに、「自分は恵まれている」、と認識している人も多かった。 第4に、日本と同様の傾向がある反面、現在でも私的に介護人を雇う、という選択肢が存在していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外の研究協力者にコンタクトを取り、相手の大学の学務予定、その他の予定との調節を行いつつ、調査計画を立て実施することの困難さを痛感している。現在のところ、ほぼ予定通りに計画は進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度はマレーシアの首都であるクアラルンプールを調査対象地としている。現在、現地の大学教授に交渉中である。こちらの予定としては、9月中旬に第1回の有料老人ホームの訪問と聞き取り調査、および入居者へのインタビュー調査を計画している。 第1回調査では、現状を聞き取ること、パイロットスタディとしての入居者の聞き取り調査を計画している。さらに3月下旬に第2回調査を行い、入居者のインタビュー調査の対象者を拡大し、より調査の完成度を高める。 資料、調査結果の整理に関しては、今年度前半は調査の集計と分析結果の整理を行う。 今年度の後半においては、マレーシア調査で得られた資料を整理し、第1段階のまとめを行うことを予定している。さらに並行して、最終年度の中国調査対象地として選んだ上海における調査実施に向け、調査協力者との交渉を進め、最終年度の調査実施に備える。
|