2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530570
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
染谷 俶子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (60154720)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 晩年の居住 / 老親扶養 / 高齢者介護 / 老親扶養意識 / 高齢者の自立 / 世代間扶養 / 国際情報交換 / 韓国:マレーシア:中国 |
Research Abstract |
平成23年度においては、東京女子大学生、ソウル市及び近郊の4大学の女子学生に対し、それぞれ200人余りのアンケート調査を実施した。24年度にはマレー語に翻訳した調査票を作成し、マラヤ大学高齢者研究所の協力を得て、同大学の女子学生300人余りに実施した。さらに前年度に実施したアンケート調査の集計・分析作業を行い、調査結果は日本語版のみならず英訳版を作成し、協力を得た大学に対し結果の報告を行った。また、平成25年度に予定されている中国における調査のため、中国語版の調査票作成も行った。 現地調査に関しては、平成24年9月と平成25年3月の2度、クワラルンプールに出かけた。マラヤ大学老年学研究所の協力のもと、9月調査においては、高齢者居住施設に関する調査では、医療機関および民間会社の経営する介護施設をそれぞれ1件、日本における養護老人ホームに相当する自立型の高齢者居住施設1件、イスラム教コミュニティに併設された高齢者居住施設1件、カソリック教団の運営する老人ホーム1件、合計5件の聞き取り調査を実施した。3月の調査では、民間で運営される最新の認知症高齢者施設、クアラルンプール市中心にある、外国人をも対象とするシニア・マンション、そしてシンガポールに隣接するジョホール市において、最近開所したオーストラリア・モデルをそのまま取り入れた有料老人ホームを訪問調査した。 研究所は大学院を併設しているため、9月訪問には博士課程在籍者を含める研究員を対象とした研究会が持たれ、日本の人口高齢化とその対応についてのプレゼンテーションを実施した。なお3月訪問時には、大学院生対象の日本・マレーシアの高齢化に関するセミナーが企画され、日本の高齢社会の課題について講演を行った。 研究成果報告としては、東京女子大学『社会学年報』第1号に、「韓国における老親扶養意識と現状-質的調査からの報告」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年間の研究計画のもとに、今回の研究プロジェクトは企画された。すでに3年間が終わり、最終年度に入ろうとしている。国際比較の実態調査に関しては、実際の調査協力大学、及び研究機関を確保することが大きな課題である。実際に調査を受け入れてもらえる対象機関、及び調査対象者の確保が予測以上に困難であった。また、個人のプライバシーを守りつつ、聞き取り調査をすることも現実には厳しい状況にある。しかしながら、綱渡りをしつつ協力者を得ることが可能となり、ほぼ予定通りに3年間の調査は進んでいる。 韓国調査、マレーシア調査からは、日本と欧米の調査を中心にしてきた調査企画者としては、予測していなかった知見をもえることができ、今回の調査の意義を感じる事態も多々生じている。同じアジアの国においても、異なる歴史と文化を背景に、高齢化の課題および老親扶養に対する意識についても、経済発展の程度から生じる差異として対応できない事柄が多く出現した。これはまさに、文化と歴史の違いを考究する国際比較調査の成果ということができる。 調査結果については、逐次、論文または国際学会等で発表を行ってきている。大変興味深い調査結果を得ており、協力機関の研究者との交流も築くことだでき、大変満足している。すでに3年間の調査から、多くの知見を得ることができ、手ごたえを得ている。平成25年度で終了するプロジェクトであるが、この成果を基にさらに研究と交流を深めていきたいと願っている。
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Strategy for Future Research Activity |
当プロジェクトは、従来の研究成果と人的資源に基づき計画したものである。しかし実際に進める過程において、新たに協力機関、協力者の開拓を必要とする状況に次々に直面した。試行錯誤の綱渡りをしながら進めてきたものの、結果的には調査は着実に実行することができた。全く面識のない海外の研究所、大学における調査においても、国レベルにおける国際関係の悪化にもかかわらず、個人的には大変協力的な関係を築くことができた。現在、南京市の金陵女子学院と連絡をとりつつ、9月の調査の準備を進めている。 2013年6月には、ソウル市において、4年に1度の国際老年学会が開催される。この学会においても、当プロジェクトの調査結果について口頭発表を行うとともに、大会の会長シンポジウムのシンポジストとして、招待され、アジアの老親扶養についての討論に参加することになっている。調査終了後には、海外の調査協力者とともに、高齢期の暮らしを視点とした比較研究の出版を計画している。 アジア諸国においても、今後の人口高齢化とその対応は深刻さを増しているため、高齢化最先進国である日本への関心は強い。さらに日本はアジアの国の仲間であり、西洋の国ではないことも、アジア諸国にとって身近に感じる先進例と感じるようである。今年度は中国を調査対象としているが、著しい発展を推し進める大国中国において、世代間の扶養意識の変化、老親扶養の社会化がどのように展開しているか、興味深い。 日本以外のアジアの国々は、日本に遅れたものの、今急激に近代化を進めているため、調査協力機関の日本の足跡に大変興味を抱き、今後の研究協力を望んでいる。当プロジェクトを進めるにあたり知り合うことのできたアジアの研究者との絆は、個人のネットワークを超え、日本と他の国との研究交流のルート構築にもなっている。今後もお互いの研究交流を進め、研究活動を進めていきたい。
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Research Products
(1 results)