Research Abstract |
本研究は,ネパールの「ダリット(Dalit)」とよばれる,アウトカーストとしてカースト制度の最底辺に置かれた被差別集団の女性たちの社会的地位向上と,社会の階層システムを基礎とした宗教や慣習に基づく社会規範,ならびに民法典の女性蔑視の思想による社会的差別構造を解消するべく社会システムの構築の必要性に着目し,ダリット女性達の地位改善の方法を明らかにすると同時に,個々人の自立と能力開発を目指した地域住民志向の効果的な小規模社会開発について実証的研究を行うものである。 ネパールのダリットの女性が,自らの地位向上を目指すために,マヒラサムハ(女性グループ)を結成し,マイクロ・ファイナンス(少額金融,以下MF)の運用をNGOと連携しながら活動を始めている。 平成22年度には,平成21年2~7月に実施したネパールの極西部から中央部経済開発区の20のマヒラサムハのMFの実態調査に引き続き,東部経済開発区(モラン郡,ジャパ郡,イラム郡)の3つのマヒラサムハの実態調査を行った。具体的には,(1)マヒラサムハとMF:人数,MFの集金額/月,返済利子等,(2)職業,労働:夫婦の仕事,労働時間,(3)教育:識字,子供の教育,(4)健康,保健衛生:トイレの有無,生理・妊娠,病気,(5)差別,暴力:階級,女性差別,暴力,人身売買等について,聞き取り調査を行った。 これらの調査結果を「内発的発展」,「エンパワーメント」の観点から分析した。MFの活動は,定期的に集まること自体に意義があり,女性たちはより自己主張や意思決定ができるようになり,自信を持ち始めている。生活防衛のため問題を共有化し,仲間意識を高めることが,借金返済の回収でトラブルも起こさず,女性の自主性や社会性を育て,エンパワーメントへの原動力ともなってきたといえる。
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