2010 Fiscal Year Annual Research Report
「全契約社員の正社員化」を実現した労使関係の実証的研究
Project/Area Number |
22530577
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河西 宏祐 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20015837)
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Keywords | 労働組合 / 契約社員 / 変形労働時間制 / 規制緩和 / 私鉄産業 / 経営合理化 / 正社員化 |
Research Abstract |
(1)本研究は、「全契約社員の正社員化」を実現した広島電鉄の労働組合(広電支部)を対象とし、それが実現するまでの「過程」について、聞き取り調査を通して実証研究を行うことを目的とする。 (2)その「過程」は、(1)混迷期(1993年~2002年)、(2)再生期(2002年~2009年)に分けられるが、本年度は前者について重点的に研究を行った。 (3)変形労働時間制の導入について。:(1)まず最初に、2つの労働組合が統一(1993年)して新組合が発足した時点から、変形労働時間制の導入(1996年)までの間について実態調査を行った。(2)新広電支部は、近い将来に予想される交通事業の規制緩和による企業経理の圧迫を想定して、労働組合が主導して「職場規律の確立運動」の推進を方針としていた。そのために、変形労働時間制(通算制)の導入など、労働組合が主導して経営合理化を推進しようとした実態が明らかとなった。(2)変形労働時間制(通算制)は、職場の労働者に対して長時間・過密労働を強いることとなり、これの導入を主導した組合執行部に対して激しい反発が向けられ、新広電支部は内部崩壊の危機に立たされた。 (4)人件費削減について。:(1)次に、規制緩和を前にして、厳しい経営合理化(人件費削減)が行われた期間(1996年~2002年)について実態調査を行った。(2)経営側からは厳しい経営合理化(退職金・本給・諸手当のカット等)が提案され、組合側が後退を続けていった実態が明らかとなった。(2)このような状態下、経営側から「赤字のバス部門の分社化」、または「契約社員制度の導入」の二者択一が提案されたため、組合側は後者を受容せざるを得ず、契約社員制度が発足することとなった(2001年)。 (5)今後の課題:来年度は、これに続く(2)再生期(2002年~2009年)について調査研究を行う予定である。
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