2012 Fiscal Year Annual Research Report
80年代の出版・活字文化生産過程に関する実証的研究
Project/Area Number |
22530580
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
伊藤 守 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30232474)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 80年代の文化 / 学術出版 / 編集者 / 消費社会 / 教養主義 |
Research Abstract |
2012年度は、1980年代の学術出版分野の動向を編集者の活動に即して検証するという当初の目的を堅持し、雑誌「情況」の編集、その後雑誌「ローリング・ストーンズ」の編集、さらにポーラ文化研究所発行の「is」の編集長を務めた七字英輔氏、「美術手帖」の編集に長年関わった三上豊氏、80年代の「ニューアカ・ブーム」と言われる新しい人文社会科学の知の産出をリードしたせりか書房の船橋純一郎氏からヒアリング調査を行った。この調査から導きだされる主要な知見は以下の通りである。 第1は、前年度ならびに今年度の調査から浮き彫りになったのは、80年代に一気に顕在化した人文社会の学術分野の変化は80年代という時代の枠で考えられてはならず、実は70年代における「教養」「教養主義」の文化的位置の変化(地位の低下)さらに「マルクス主義」の知的権威の変化、「消費社会化」という文化変容、そして読者の志向の変化をベースに生まれたという点である。70年代の出版文化の重要性が浮かび上がった。 第2は、バブル期にあたる80年代は、70年代までの「禁欲的」な表現から離れ、印象的な表現や伝統回帰さらにメディアの多様性が特徴となり、雑誌文化が活性化した。だが、雑誌の売り上げはそれほどの伸びを見せることはなかった。一方で、学術出版では、岩波に象徴される戦後の啓蒙・教養主義とは一線を画する中小の出版社の編集者が個人的に企画・編集を立ち上げる活動の余地がまだまだ存在したという。関心を共有する編集者の間のネットワークも存在した。戦後の「教養主義」とは意識的に距離を取る当時の若手研究者を発掘し、まだ知られていなかったフランス現代思想の翻訳出版する活動はこうした小規模の学術出版の編集者が担ったことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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