2010 Fiscal Year Annual Research Report
近現代日本における家族変動と社会政策の相互関係に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
22530593
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Research Institution | Sonoda Women's University |
Principal Investigator |
山本 起世子 園田学園女子大学, 未来デザイン学部, 教授 (50230545)
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Keywords | 歴史社会学 / 家族変動 / 社会政策 / 人口 / 優生 / 産児制限 |
Research Abstract |
平成22年度においては、1920年代以降の日本における生殖に関する主要な3つの運動-産児制限運動、優生運動、家族計画運動-が、日本の社会政策(人口政策、優生政策)および家族変動にどのような影響を与えたのかを分析した。先行研究ではこれらの運動が個別に研究されることが多いため、運動間の対立や連携の様相を長期的視野で分析することには意義がある。研究から得られた主な知見は以下のとおりである。 1. 産児制限運動の目的は、(1)貧困からの救済、(2)人口過剰問題の解決、(3)多産からの解放、(4)人間の質の向上であり、戦前と戦後の運動において連続性が認められる。この運動は、とくに都市で広がりつつあった少産を願う人々の意識によって支持され、1920年頃から始まった出生率低下に影響を与えたと考えられる。さらに、戦後には「優生保護法」成立を推進した。 2. 戦前の優生政策の推進に影響を及ぼした優生運動は、人口減少を招く産児制限を批判したが、産児制限運動は優生思想を取り入れることによって、運動め社会的受容を図った。 3. 戦後においては、人口過剰問題と逆淘汰現象を同時に解決するため、産児制限と優生政策が推進された。この政策を牽引したのは、戦前から活動していた産児制限運動家と、逆淘汰現象を警戒する優生政策推進派であった。 4. 産児制限運動と優生運動は、戦後の家族計画運動に合流した。家族計画運動では、人口資質の向上や子どもの幸福のため、計画的に望まれた子のみを産み、より良い環境で育てることが奨励された。親子関係については、老親の子どもに対する依存を利己主義として否定し、子に対する親の養育責任を強化することが目指された。この運動は「家族意識の変革」を促進したといえる。
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Research Products
(1 results)