2012 Fiscal Year Annual Research Report
近現代日本における家族変動と社会政策の相互関係に関する歴史社会学的研究
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22530593
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Research Institution | Sonoda Women's University |
Principal Investigator |
山本 起世子 園田学園女子大学, 健康科学部, 教授 (50230545)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 家族制度 / 民法 / 歴史社会学 |
Research Abstract |
24年度においては、「家族関係を承認し規制する機能をもつ家族法」としての民法を研究対象とし、1920年代~40年代の日本における家族制度の変化を、民法改正をめぐる議論を考察することによって明らかにした。親族・相続に関する民法改正が必要とされたこの時期は、大きな社会変動に伴う家族制度の転換期であった。そこで本研究では、1920年代の臨時法制審議会による民法親族編相続編の改正構想と、終戦直後に臨時法制調査会によって行われた民法改正を対象とし、そこに現れた家族制度の変化を考察した。その結果、得られた知見は以下の通りである。 1.1920年代の民法改正構想における家族制度改革の特徴は、以下の6点に集約できる。すなわち、(1)一家の「平和」・親密性の重視、(2)婚姻の尊重、(3)婚姻の自由化、(4)家族員間の公平性の保障、(5)戸主権の抑制、(6)家族(親族)紛争への家事審判所の介入、である。 2.1920年代の民法改正構想は、産業化・都市化とともに進行する大衆社会化状況と、それによって促進された平準化の進行と関連していたと考えられる。平準化は、国民の自発的動員が不可欠となった総力戦体制において促進された。 3.1920年代の民法改正構想は、戦時下において、戸主の居所指定権と離籍権の制限、「私生子」という名称の廃止において、内容に変更はあったものの実現した。 4.戦後の民法改正過程では、世代的連続性や「孝」規範を重視した「家」を否定し夫婦中心の家族を形成しようとする勢力と、戸主権等「封建的な」要素を排除しつつ連続性や「孝」規範を重視した家族を維持しようとする勢力との間で激しい論争があった。改正を主導した前者は、「家」に関する規定をすべて削除し、新たな家族制度とは何かを明示しないことによって、論争を収拾し改正を遂行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究実施計画として、1920年代に立案された民法改正要綱、および戦後における民法改正を対象に、それらの理念と立案過程、内容について調査・分析を行うとしていたが、この計画をおおむね順調に進行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成22~24年度の研究成果を踏まえ、社会政策の3領域―家族法、社会福祉政策、身体管理政策・人口政策―の時代的変遷に関する知見を総合し、仮説的に提示した時期区分および各時期の社会政策の特徴について検証する。 また、家族生活や家族意識の変容に関する数量的・質的調査、人口学的統計、衛生状態に関する調査研究を収集し、社会状況の変化や家族変動の様相を分析する。 以上の知見をもとに、社会政策が家族生活や家族構成・家族意識に及ぼした影響と、家族変動が社会政策に及ぼした影響について考察する。
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Research Products
(1 results)