2011 Fiscal Year Annual Research Report
「消費されない農村」モデル構築のための理論的・実証的研究
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22530594
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
つる 理恵子 吉備国際大学, 社会学部, 准教授 (20227474)
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Keywords | 消費される農村 / 田舎のプロデューサー / 都市の欲望 / 小さな経済 / 他者への信頼 / ダウンシフト / 弱さの力 / 文化変容 |
Research Abstract |
今年度は、従来の村落研究に関する理論の整理およびフィールドワークを進めた。都市-農村交流を行う関係者・地域での調査を通して、「消費されない農村」のモデルを描くと共に、都市-農村交流の経過や現状・課題、今後の展望を捉えようとしている。 1)文献研究とレビュー論文の準備 農村社会学のほか、農業経済学、日本民俗学、ソーシャルキャピタルやネットワーク論、地元学・半農半X思想関連の文献研究を通して、地域アイデンティティ創出のプロセスと重要性、外に向かって開かれた家・ムラ・地域のあり方、フェミニズムの視点の弱さなどが浮かび上がってきた。家・ムラ論、個人への着目、フェミニズムの視点、生活農業論、等の方法論的有効性と限界・課題の整理を目的とする村落研究のレビュー論文を作成中。 2)調査等の実施状況 個山県高梁市備中町平川、高梁市川上町高山市、鳥取県日野郡日南町での調査を実施した。先行研究の知見や残された課題などと共通するものも多かった。それと同時に、新たな気づきとしては、家・ムラ・地域などが1つの意志(鈴木榮太郎の「村の精神」、有賀喜左衛門の「生活組織」と近いと考える)を持っているかのように、人々を取りまとめた.り、突き動かしたりしていくことが分かった。たとえば、高梁市備中町平川では、住民主体のまちづくりが30年以上にわたり続いており、その過程で蓄積されてきたさまざまなノウハウが「平川らしさ」として伝統のように継承されてきている。しかも、その伝統は不変ではなく、常に創造されてきている。少子高齢化が深化する中、平川を取り巻く諸条件は変化し、抱える課題も変化しているが、平川がそうした変化に柔軟に対応できているのも、歴史に学びつつ柔軟さを失わない態度によるものであると推測される。 これまでのところ、「消費されない農村」であるための諸条件として、主体性の所在、田舎のプロデューサーの存在、地域アイデンティティの有無、ムラの編成原理、外社会との関係性、ジェンダー指数などが重要であると考えている。今後、これらを基に、「消費されない農村」モデルを作る予定である。 3)学会報告 2011年10月、日本民俗学会第63回大会にて報告、投稿論文執筆中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、実施できている。調査および文献の読み込みを進め、学会報告も行い、論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究計画に沿って、一応のまとめを行う。補充調査とまとめ、文献研究のまとめを行う。現在執筆中の論文の投稿を行う。24年度中に関連する2つの学会(国内)で報告予定。また、平成25年度には本研究成果をARSA(アジア農村社会学会)にて報告予定であるので、その準備のために、平成24年7月のIRSA(世界農村社会学会)に参加し、情報収集を行う。 本研究は24年度で終わるが、引き続き関連のテーマで科研申請を行う予定である。
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