2010 Fiscal Year Annual Research Report
先進国における過疎/農村地域の生活保障に関する研究~フィンランドの「村運動」から
Project/Area Number |
22530595
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Research Institution | Hiroshima Kokusai Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 里美 広島国際学院大学, 現代社会学部, 准教授 (00300129)
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Keywords | フィンランド / 過疎/農村 / EU / 村おこし / 地域活性化 |
Research Abstract |
本研究は、「フィンランドでは過疎/農村地域住民の生活が、地方自治体と住民による『村運動』の緊張関係において実現されている」という仮説の下、(a)地方自治体および「村運動」が住民の生活のどの側面を支援しているか、個々の生活支援の特性と両者の関係(補完か対抗か)、(b)フィンランドが「自治体連合」から、市町村合併へと地方への対応を変化させている現状について、「村運動」全国協議会がとった態度、(c)フィンランドの過疎/農村地域住民にとっての離れて住む家族の支援の重要性、(d)行政サービス、居住地を共にする住民による支援の、過疎/農村地域住民にとっての重要性、の諸点を明らかにすることを目的として企画した。 2010年度は、3年計画の研究の初年度として、トゥルク大学を拠点に、村運動、過疎/農村政策に関わる文献資料の収集を行い、当該分野の基礎的な情報の収集に努め、現地での探索的な調査を実施した。この結果、フィンランドの村運動は、現在では国の支援を得つつ、EUの農村開発プロジェクトと密接な関わりを持って展開しており、その成果はEUから高い評価を受けていること、村運動に取り組む村が全国に広がる一方で、その内容については村ごとに差が大きいことも明らかになった。 本研究は、北欧の福祉国家の一つであるフィンランドにおける生活保障を見るにあたり、地域(都市と過疎/農村地域)という変数を持ち込み、地域差に配慮する分析を行うことをねらい、とくに過疎/農村地域の福祉について、その向上を企図する動きとして村運動に注目しようとした。今年度の研究により、過疎/農村地域の福祉について見るにあたっては、村運動とあわせて、EUの農村開発プロジェクトとの関係に配慮する必要があることがわかった。
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