2011 Fiscal Year Annual Research Report
先進国における過疎/農村地域の生活保障に関する研究~フィンランドの「村運動」から
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22530595
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Research Institution | Hiroshima Kokusai Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 里美 広島国際学院大学, 現代社会学部, 准教授 (00300129)
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Keywords | フィンランド / 過疎/農村 / EU / 村おこし / 地域活性化 |
Research Abstract |
本研究は、北欧の福祉国家の一つであるフィンランドにおける生活保障(ここでは、社会保障、市場のみならず、地域、家族を含む)に注目するにあたり、地域という変数を導入し、とくに過疎/農村地域の福祉の現状に焦点をあてている。具体的には、過疎化、高齢化が進行し、合併によって自治体規模が大きくなる中、過疎/農村地域住民の生活の支援について期待が寄せられている地域住民の活動に注目する。 2011年度は、フィンランドの中でもとくに過疎化、高齢化が進んだ北部、東部の自治体の農村部において関係者の聞き取り調査を実施した。この結果、(1)フィンランド全土で大規模な自治体合併が進行しているが、その後の自治体間の協力体制には、大きな差があること、(2)住民による地域の福祉の向上活動については、財政的支援をほとんど伴わない村運動よりはむしろ、資金援助の額の大きいEUのLeaderプログラムが、村おこしに取り組む人々の間で高い評価を得ていること、(3)高齢者の支援について、行政によるサービスに加え、住民によるサービスの創出、また離れて住む成人子の支援が重要になっていること等がわかった。 日本における北欧諸国の福祉に関する研究においては、地域という変数の導入が始まっているが、とくに過疎/農村地域における住民自身によるサービス創出の動き、行政との役割分担等についてはほとんど注目されてこなかった。 本研究は、フィンランドにおける過疎/農村地域住民の福祉の現況を、住民による活動を中心に明らかにしている点で意義がある。 なお、2011年度には、2010年度の研究成果について学会報告を行った(2011年10月22日、於:北ヨーロッパ学会)。主な内容は、(1)フィンランド地域政策の変遷、(2)フィンランドの地域政策で前提とされている地域区分、(3)EU加盟後、フィンランド全土に広まったEUの農村開発プロジェクトについて、である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度には、平成22年度の研究をもとに研究の進捗を図ることができたため。具体的には、22年度の文献調査(フィンランドの地域政策および村運動の変遷に関する先行研究のレビューによる基礎情報の取得と研究主題の明確化)および村運動事務局訪問(研究の趣旨説明、研究への協力依頼)に基づき、23年には、村運動事務局から紹介を受けた複数の過疎儂村地域において、行政および村おこし関係者に対するインタビューが実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画の研究の最終年度として今年は、昨年度のフィールドワークで情報収集を行った上記地域の中から一か所を選び、Rovaniemi市Vanttauskoski地区の行政サービスおよび住民による自治(ロヴァニエミ市の中でも実験的、モデル地区となっている)、および住民による働く場の創出(=高齢住民に対する生活支援サービスを行う組織の設立)について、補足的な情報の収集を行う。今年度の研究計画の変更、研究遂行上の問題点は今のところとくにない。今後、発生する可能性があるとすれば、現地でのフィールドワークの実施に関してである。現地調査については、余裕のある計画を心がけ、調査対象者の都合によっては、夏季のみならず、秋季、冬季に現地調査の時期を設定するなど、柔軟な対応を心がけることにする。
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