2010 Fiscal Year Annual Research Report
原子力災害による被害住民の社会的救済に関する実証的研究
Project/Area Number |
22530596
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
山室 敦嗣 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (90352286)
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Keywords | 原子力災害 / 救済 / 生活保全 |
Research Abstract |
研究代表者は、原子力災害からの救済が十全であるためには、どのような社会的救済の仕組みが必要なのかを司法的救済、医学的救済などとの関わりのなかで実証的に明らかにするという目的のもとで研究を進めている。 本年度は、原子力開発利用の社会科学的研究(経済学、行政学、社会学等)のなかで原子力施設立地点を対象とした諸研究の検討と、研究代表者の過去の調査事例(核燃料加工工場JCOの臨界事故)の再考をつうじて本研究をすすめるにあたっての視点形成をおこなった。 原子力事故に見舞われた後も原子力施設が稼働する地域に住み続ける住民にとっての救済の在り方を考えていくにあたっては、立地点での生活保全はいかにして可能か、という問題設定のもとでも考察していく必要があることを明らかにした。その際、脱原子力運動/推進運動といった住民間にみられる言動の差異に着目した立論だけでなく、そうした差異が無効になるような地点から住民を捉えることも必要であるという考え方のもと、原子力災害に直面した住民が諸課題への対処にあたって経験する<ためらい>に着目した立論が必要であることを論じた。 この成果は、「住民のためらい~原子力施設立地点での生活保全はいかにして可能か」(『現代文化のフィールドワーク』足立重和・山泰幸編、ミネルヴァ書房、2011年9月)として刊行される。 また以上の議論は、茨城県東海村でのJCO臨界事故のフィールドワークに基づいた立論であるので、2011年3月の東日本大震災による福島第一原発事故をめぐって行う予定のフィールドワークのなかで再検討していきたい。
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