2011 Fiscal Year Annual Research Report
原子力災害による被害住民の社会的救済に関する実証的研究
Project/Area Number |
22530596
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
山室 敦嗣 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (90352286)
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Keywords | 原子力災害 / 生活保全 / 住民のためらい |
Research Abstract |
研究代表者は、原子力災害からの救済が十全であるためには、どのような社会的救済の仕組みが必要なのかを司法的救済、医学的救済などとの関わりのなかで実証的に明らかにするという目的のもとで研究を進めている。 本年度は、原子力施設立地点・茨城県東海村で継続しているフィールドワークの成果を「住民のためらい~原子力施設立地点での生活保全とは」(『現代文化のフィールドワーク入門』足立重和・山泰幸編、ミネルヴァ書房、2012年1月)として刊行した。 日本の原子力開発の発祥の地であり、しかも日本で初めて住民が避難した原子力事故(JCO臨界事故)の発生した茨城県東海村の事例から、数多くの原子力施設に囲まれて暮らす住民の抱える「ためらい」と、それを生かした生活保全の方向性に焦点をあてた論考である。 とくに、被害を経験した農家や主婦グループが、被害をうけたにもかかわらず「加害者/被害者」「推進派/反対派」という二分法的なカテゴリーから距離をとり、地元の原子力施設とのこれまでの向きあい方を。自省」するという言動に着目して分析をおこなった。 原子力施設立地点での生活保全のあり方の方向性として、「ためらい」といった住民の心意を汲んだ生き方を基軸に据えることの重要性を指摘した。その知見は、立地点の内発的発展や脱原発運動の機能といった従来の議論をより広い地平のもとに置き直し、住民総体にとって有効なかたちで展開することに貢献すると思われる。 また東日本大震災による福島第一原発事故を契機に進められている中央主導のエネルギー政策や被害者救済の在り方に、被害を経験した住民のためらいがどれだけ生かされているのか、という視点から再考を促すことに貢献できるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目で成果を著書(共著)のかたちで公表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災による福島第一原発事故の影響は、フィールドワークを進めている茨城県東海村でもみられる。もちろん、今年度から行っている福島原発事故の影響についての聞き取りを継続することはもちろんだが、福島県内でのフィールドワークをはじめて、東海村との比較を試みたい。
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Research Products
(1 results)