2011 Fiscal Year Annual Research Report
ピアサポート実践における障害当事者のアイデンティティ形成とコンフリクト
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22530608
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
児島 亜紀子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (40298401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 博幸 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (30288500)
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Keywords | ピアサポート / コンフリクト / 自立生活センター / 障害者アイデンティティ |
Research Abstract |
平成23年度においては、以下の研究を実施した。 ・自立生活センター関連の文献レビューと、インタビュー調査をつきあわせ、障害者スタッフと健常者スタッフの間に生じるコンフリクトと、障害者スタッフ同士に生じるコンフリクトの整理を行った。 (1)障害者スタッフと健常者スタッフの間に生じるコンフリクトは、利用者と介助者とのトラブルにまつわるもの以外に、センター運営に関するコンフリクトがあることが明らかになった。健常者スタッフが、直接的な身体介助以外のケア、すなわちエンパワメントや生活相談等に参加することができない状況は、「自分ももっとやりたい、介助以外の仕事でも参加したい」という気持ちを生み出す。自立生活センターには、いわゆる「障害者」の枠には入らないが、何らかの当事者性をもって働いている健常者スタッフもおり、「介助以外の仕事もやりたい」「スタッフの運営をそばで見ていて、もっとこうしたらよいと思うこともいろいろあるが、健常者の参加の場が制限されているのでもやもやしている」という思いを持つ者がいるということが浮かび上がってきた。健常者の参加について、自立生活センターの運営理念や趣旨に照らし、障害者スタッフらがどのように捉えているのか、さらに聞き取りを深める必要がある。 (2)障害者スタッフ同士におけるコンフリクトの発生は、障害者運動の担い手でもあるという自覚の強度に関連しているという仮説を立てていたが、現在までのところ、そのように裏付けられるまでには至っていない。また、ピアサポートを行う障害者スタッフのコンフリクトが、障害者アイデンティティとどのように関連しているのかについては、分析の途中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
障害者スタッフと健常者スタッフの間にあるコンフリクトの様態については明らかになりつつある。しかしながら障害者スタッフ同士のコンフリクトについては、コンフリクトと運動の質的変化、担い手の意識の変容との関連が明らかになっていないため、追加インタビューを行うか、仮説の修正を行う必要が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記11.でも述べたように、障害者スタッフ同士に生じるコンフリクトは、自立生活運動に対するコミットメントの強さや、運動の価値に対する考え方の違いなどに由来する部分が大きいと当初考えていたが、そのことを裏付けるデータは採取できていない。今後さらに追加インタビューを行い、障害者アイデンティティとコンフリクトの関係、またコンフリクトが何によって生じ、どのように変化していくのかを明らかにしていきたい。
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Research Products
(3 results)