2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランスの貧困(論)と新しい生活扶助(RSA)に関する研究
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22530613
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
都留 民子 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (00236952)
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Keywords | フランス / 貧困 / 失業 / 公的扶助 / 生活扶助 / 社会保障 |
Research Abstract |
2000年代に入り、急速に高まった扶助受給者へのスティグマの背景にある新自由主義的貧困論について検討した。とくに2011年のWauquiez発言やDaubresseレポートなどであるが、同時にそしてアクティベーション策を批判するD.MedaやS.Paugamなど社会学者の論考から、論点をつかんだ。 現在のヨーロッパ経済危機における失業者急増とその内容、さらに失業保険-失業扶助-社会的にミニマム(RSAなどの生活扶助)の受給変化を分析した。 現地における聴き取り調査(9月15日~10月8日)の内容については以下のとおりである。1)扶助受給者の就労支援にも関与することになる職業紹介所の職員の「福祉的支援」、そして地域の雇用(再)確保を目指す参入支援組織(パリのESPACE INSERTIONなど)におけるソーシャルワーカーたちの援助の内容と課題について把握した。重視したのは、受給者とワーカーの「相互契約」性、経済給付の認定・継続と雇用に向けた「福祉的支援」の関係である(後者の行き詰まりは前者に影響を与えているのか)。2)パリ県の受給者の統計と性格の変容である。とりわけ2010年9月からのRSA-jeuneの導入による青年受給者の動向について。3)県の参入計画で特徴的なアーティスト(舞台・音楽芸術家など)の受給者へのformation(職業再訓練)や雇用創出策・起業援助の現場を見学した。こうした調査を通じて、積極的連帯所得(RSA)の当初の意図(ワーキングプアの就労所得への補足手当をもって貧困を減少させる)の実現は困難となり、RSAは従来のRMI(失業給付)へと回帰していたことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RSAのワーキングプアの手当としての効果を明らかにすることが目的であったが、経済状況の顕著な悪化のなかで、むしろ失業給付としての効果を検証せざるをえなくなった。しかし、むしろフランスのアクティベーション策の脆弱さを把握できることになり、この点では成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
従来どおり、貧困の性格をめぐる大論争、そこでの貧困論(複数)の特徴と系譜、今日的扶助のあり方について研究を継続する。 そして日仏の就労支援の共通性と相違性についての研究も継続する。
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Research Products
(4 results)