2011 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者住宅の重度化対応に関する国際比較研究~住まいから分離されたケアの形~
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22530622
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Research Institution | Tokyo Kasei University |
Principal Investigator |
松岡 洋子 東京家政大学, 人文学部, 講師 (70573294)
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Keywords | エイジング・イン・プレイス / 地域居住 / 住まいとケアの分離 / 高齢者住宅 / 在宅ケア |
Research Abstract |
海外においては、オランダの高齢者住宅(186戸)での在宅24時間ケアの実態を同行観察によって明らかにし、退去実態(退去先、理由)・サービス利用実態、重度化対応について、ハウス長(地域管理部長)、看護師(レベルIV)、医師から聞き取りを行った。 在宅24時間ケアはAWBZの下、分刻みの巡回サービスを提供しており、186戸の高齢者住宅に対して、日中・夜間・深夜それぞれ14人・3人・1人(186戸に対して)の職員配置で自立生活を支えていた。こうしたサービス体制によって、ほとんどが施設にリロケーションすることなく、高齢者住宅で最期を迎えていた。これを可能にするのは、高齢者住宅(75m^2)での自立的居住環境、本人の意思を基盤として、(1)生活基盤支援型ケア、(2)深夜を含む短時間巡回型ケア、(3)資格統合による介護・看護連携の良さ、(4)看護師(レベルIV)のスキルの高さ、(5)延命治療は行わない、等の要件であることが浮き彫りにされた。 日本では、シルバーハウジング(SHと略す、関西B市、東京都)を対象に退去実態を調査した。SHでの死亡/リロケーション/その他の割合は、B市・東京都でそれぞれ24.5%・19.0%/62.3%・59.5%/10.2%・21.4%で、リロケーション(長期入院、施設入所)が高い率を占めた。聞き取り調査では、介護保険だけでは介護が不足する点や人間関係の希薄さが挙げられた。逆に、地域居住を可能にする要因として、「ここ(SH)にいたい」という本人の意思と家族の存在があった。 日本でもエイジング・イン・プレイスに向けて確実に制度が整えられつつある。しかし、今回の調査でSHでの地域居住は困難であることが明らかとなった。オランダの24時間在宅ケアから導かれる5ポイントは、デンマークとともに日本の地域包括ケアにさまざまな示唆を与えてくれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の「研究の目的」は達成した。(2)としたのは、日本におけるSH調査のサンプル数が計画よりも少なかったからである。しかし量的調査も質的調査も行えたので有意義な結果を得られたと考える。一方、オランダでの調査については、計画を100%達成することができた。これは、H23年9月調査に加えて、9月に終了しなかった退去実態調査を、H24年3月調査(イギリスのプレ調査)で補足出来たことが功を奏している。さらに、H24年3月調査では、尊厳死についての医師インタビューを実施でき、ターミナルケアの連携のあり方を考察する上で貴重な知識をえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画どおり、H24年度は海外ではイギリス調査(シェルタード・ハウジング)、日本では高齢者専用賃貸住宅(高専賃と略す)を対象とした調査を行う。イギリスについては、H24年3月のプレ調査で調査協力先を確保した。日本の高専賃については、どの会社・組織から協力を得るか、現時点で確定できていない。できるだけ、協力していただけるよう働きかけて、結果を出したいと考えている。協力を得られなかった場合、調査対象を小規模多機能型居宅介護を利用している在宅生活者に変更する可能性がある。
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Research Products
(8 results)