2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530624
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
金子 光一 東洋大学, 社会学部, 教授 (30255153)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真実 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (20337695)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流 / イギリス / 公的責任 / 社会福祉政策 / 公私関係 |
Research Abstract |
本研究は、民間社会事業が公的なサービスを補完する役割を果たしてきた日本と、民間営利部門が公的部門と一定の排他的関係を維持しながら発展してきたイギリスの福祉サービスの歴史的変遷を比較検証しながら、今日の両国の公的サービスの役割と責任を、地域を基盤とする福祉サービスの現状から検証することを目的とする。 平成24年度は、平成23年度までの結果を整理し、日本において可能な限り史資料を収集し、その取りまとめを行った。また、イギリスのブリストル大学SPS(School for Policy Studies)のReaderであるDr.Misa Izuharaを日本に招聘し、研究分担者である東洋英和女学院大学の山本真実准教授と共に数回に渡り研究会を行った。なお、Dr Izuharaによる講演会を、平成24年10月30日に東洋大学白山キャンパスで開催した。 平成24年度の研究を通じて明らかになった成果の一部は、研究代表者が平成24年5月13日に日本女子大学目白キャンパスで行われた社会事業史学会第40回大会で報告した。また、研究代表者は研究分担者と共に、イギリスにおける社会福祉の現状と動向を『世界の社会福祉年鑑2012』(旬報社)で紹介した。さらに、研究代表者は、国家責任としてのナショナルミニマム思想を『地域福祉研究』第40号にまとめた。また、研究分担者は、横浜市の子育て支援に関する行政の役割について『調査季報』第172号(横浜市政策局政策課)に特集論文として投稿した。なお研究代表者は、本研究を通じて浮き彫りになった社会福祉の海外史研究の到達点と課題について、『社会事業史研究』第42号で明らかにし、日本の社会福祉史の公的役割と責任において重要な意味をもつ「戦前と戦後の連続・非連続」の問題を、『対論 社会福祉学1 社会福祉原理・歴史』(中央法規出版)において検証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初研究計画では、研究代表者はイギリスに1年間滞在し、ブリストル大学を拠点として調査研究を行う予定であった。しかしながら、学内外の事情により平成24年度その海外研究活動を行うことができなかった。そのため当初研究計画の修正を余儀なくされたが、ブリストル大学のDr.Izuharaの協力により、予定していた史資料の収集は十分に行うことができ、イギリスの公的サービスと民間サービスの現状に関する多くの情報をもって訪日してくれたことで、大幅な修正をすることなく計画はほぼ達成されたと考える。また、イギリスにおける調査は主にDr.Izuharaが担い、日本の調査は研究分担者が着実に行っており、研究会を通じてその分析も順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる平成25年度は、国内外における追加調査研究と分析を通じて、研究分担者・研究協力者と共に最終報告の内容検討および研究成果の報告を行う。 まず、日本とイギリスにおける福祉サービスの公私関係の変遷を比較検証し、両国の福祉思想の流れの相違点を明らかにする。 また、日本とイギリスの福祉サービスの実施体制および福祉サービスの提供体制を踏まえて、公的機関の役割の現状について分析する。この作業を行うために日本とイギリスで追加調査を行うことを予定している。 さらに、イギリス以外の諸外国の公私関係の歴史的変遷を検証し、グローバルな視点から福祉サービスの公的役割と責任を明らかにする。これまでイギリスを中心に比較検証を行ってきたが、広く世界に目を向けると、多様な公私関係の歴史がある。そこでは血縁あるいは地縁を通じた様々な人間相互の支援システムが機能している。また、それすら存在せず、社会環境から排除されながら暮らしている人々もいる。研究代表者は、それぞれの国(あるいは地域)の社会的・文化的背景を踏まえて、その異質性を捉えながら、公私関係を軸に世界の社会福祉の形成と展開を検証する必要があると考える。そこで日本とイギリス以外の韓国、北欧、北アメリカ、ラテンアメリカなどの国々に関する検討を進め、それらを踏まえて研究成果をまとめる作業を現在構想している。
|
Research Products
(6 results)