2010 Fiscal Year Annual Research Report
少子高齢化社会における犯罪者処遇:刑事司法を専門とするソーシャルワーカーの可能性
Project/Area Number |
22530648
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
浜井 浩一 龍谷大学, 大学院・法務研究科(法科大学院), 教授 (60373106)
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Keywords | 少子高齢化 / 高齢者 / 犯罪者処遇 / ソーシャルワーカー / 触法 |
Research Abstract |
本研究は、少子高齢化、特に急速に進む人口の高齢化などの社会の構造的な変化によって、犯罪や犯罪者がどのように変化し、それに対応する犯罪者処遇がどうあるべきなのかについて司法と福祉の連携という視点から検討することを目的としている。 平成22年度は、まず、人口動態の変化が、犯罪や刑事司法に与える影響について分析し、少子化によって犯罪の主要な担い手である少青年人口が減少し、殺人を始めとする伝統的な犯罪や交通死亡事故が減少しつつあること、その一方で、高齢者による万引きや自転車盗が増加し、刑務所内の高齢化が深刻な問題となっていることが明らかとなった。刑務所の高齢化は、従来の職業訓練などを中心とした自立支援型犯罪者処遇自体のパラダイム転換を必要としている。 また、上記のような問題点を踏まえて、刑事司法と福祉の連携を柱とした新たな犯罪者処遇モデルを構築するため、福祉先進国であるノルウェーと精神医療や社会的包摂の分野で先進的取り組みをしているイタリアにおける高齢犯罪者の動向や犯罪者処遇の在り方に関する調査を行った。その結果、ノルウェーのように最低補償年金制度など、福祉そのものが充実し、「にげない福祉」が徹底されていれば、高齢化が進行しても高齢者犯罪そのものが増加しないことがわかった。また、イタリアは、憲法で刑罰の目的を更生と規定しているため、判決確定後にソーシャルサービスが社会調査報告書を作成し、それに基づいて矯正処分監督裁判所が刑の執行(形態や内容)を検討することによって、高齢者には自宅拘禁などの代替刑が適用されやすく、実刑が回避されることがわかった。さらに、イタリアでは、受刑者だけでなく、薬物依存者や触法障害者などを専門に処遇・支援するソーシャル・サービス機関が地域ごとに設置され、司法、医療、心理学、教育、ソーシャルサービスを統合した重層的な支援が本人や家族に対しても行われていることもわかった。 上記以外に、平成22度末には、ソーシャルワーカーの司法側のカウンターパートになり得る弁護士に対して、高齢・障害被疑者・被告人の弁護や更生に関する意識調査を実施した。
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