2011 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルワークにおけるアドボカシーの学際的な理論再構築とその技術に関する研究
Project/Area Number |
22530653
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
小西 加保留 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (10068588)
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Keywords | 権利擁護 / アドボカシー / 自己決定 / 意思決定能力 / 制度 / 人権 |
Research Abstract |
社会福祉における「アドボカシー」は、基本的なミッションとして合意されているが、その概念や定義は多岐に亘り、内容として合意されているとはいえない。日本においては、契約に基づく社会福祉サービス利用の仕組みや成年後見制度が導入されて10年を迎え、「権利擁護」に関する議論が活発化したが、他の専門職と区別した社会福祉の専門性に基づく理論や実践の内容は明示されていない。そこで本研究は、ソーシャルワークの立場のみならず、法律学等との学際的な視点から検討し、新たな社会福祉としての理論的枠組みを再構築することを目指すと共に、ソーシャルワーク実践における技術を抽出、提示することを目的として開始した。 平成22年度には、「アドボカシー」や「権利擁護」に関わる基本的な概念を連携研究者・研究協力者に加えて、ソーシャルワーカーおよび弁護士各一名を議論に加えて検討し、意思決定能力を前提とした市民法と意思決定能力に障害がある人への支援の関係、最善の利益に関わる基準、制度を軸にした議論と方法論を軸にした議論の棲み分け等の必要性への理解が共有された。 平成23年度は、前年度に予定していた一定の理論的枠組みに関する仮説設定まで至らなかったため、新たに社会福祉の研究者を加え、また最前線で権利擁護支援を実践しているソーシャルワーカーに毎回協力を求めて、改めて理論と実践の立場からの情報提供を受けた。一方で法律家である連携研究者が本研究成果を著書として出版した。それらを総合して、漸く一定程度の議論の棲み分けと仮説設定への可能性が見出された。すなわち、狭義と広義の権利擁護制度、実践活動における学際的な着目点の相違、自己決定過程支援と権利主張支援、権利実現支援の棲み分けならびにそれらに伴う様々な困難性について等である。当初の予定では、社会福祉におけるデドボカシー実践の方法や技術の分析予定であったが、そこまで踏み込むことはできなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「アドボカシー」に対する学際的な理論検討について、当初考えていた以上に検討課題が多く、仮説設定に時間を要した。法律と社会福祉の双方からの視点のみならず、理論と実践における視点の相違や齟齬も予想以上に大きく、当初予定していたように実践の方法や技術の分析を並行させることは、逆に議論を混乱させることが予測されたため保留とし、理論的な議論を優先させたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
「アドボカシー」や「権利擁護」にかかる概念や理論を学際的に検討することの意義を、本研究を通じて改めて認識できた。一方で、各専門領域内においても多様な捉え方があることが明確となり、更なる整理・精査のプロセスを踏む必要があると考える。その上で、最終年度である平成24年度は、これまでの成果を公表するシンポジウムを開催することによって、ディスカッションする機会を持つ予定である。また理論と実践の関連や実践にかかる分析については、上記の整理を踏まえた上で、領域を限定し、研究協力者との議論を経て、再度新たな研究計画を持って探究する必要があると考えている。なお、報告書以外に論文作成を目指す予定である。
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