2011 Fiscal Year Annual Research Report
リーダーシップ構造の成立過程とその有効性に関する研究
Project/Area Number |
22530671
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂田 桐子 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (00235152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淵上 克義 岡山大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (20202294)
高口 央 流通経済大学, 社会学部, 准教授 (00397936)
前田 和寛 比治山大学短期大学部, 総合生活デザイン学科, 講師 (30462055)
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Keywords | 社会系心理学 / リーダーシップ / 集団 |
Research Abstract |
本研究は,公式リーダー1名が存在する集団において,特定のリーダーシップ構造が成立する過程を解明すると共に,リーダーシップ構造が,公式リーダー,集団メンバー個々人,及び集団全体の成果に及ぼす効果を明らかにしようとするものである。平成23年度は,特に,共有型リーダーシップ構造及び分散型リーダーシップ構造の有効性について,詳細に検討した。 2つの大規模病院の看護組織を対象として横断的調査を行った。共有型と判断されるリーダーシップ構造は見出せなかったため,主として分散型リーダーシップ構造の有効性について検討した。看護師に看護師長(リーダー)と副師長(公式サブリーダー)のリーダーシップの評価を求めたほか,非公式リーダーの有無や人数,およびそのリーダーシップ機能について評価を求めた。さらに,病棟の目標達成度について各病棟の看護師長に評価を求めた。個人単位と集団(病棟)単位の分析を実施した結果,次の2点が現段階で明らかになっている。(1)個人のモチベーションに対して,師長,副師長,及び非公式リーダーの集団維持機能が正の関連を示し,師長の目標達成促進機能が負の関連を示した。(2)病棟の目標達成度に対して,看護師長の目標達成促進機能,副看護師長の集団維持機能,及び非公式リーダーの集団間リーダーシップ機能と情報収集・伝達機能が正の関連を示した。 以上の結果は,複数の立場の異なるリーダーがそれぞれ異なるリーダーシップ機能を担うことで,集団全体の生産性(目標達成度)が向上することを示唆するものである。昨年度の調査では,リーダー単独構造に比べて分散型リーダーシップ構造が有効であることを示唆したが,本年度の調査では,どのような機能分担が有効なのかを示唆できた点に意義がある。また,特に非公式リーダーの情報収集・伝達行動や集団間リーダーシップ(集団間の交渉や調整)が有効に機能するという結果は,リーダーシップ研究領域における新たな知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初予定していた通り,分散型リーダーシップ構造について,個人レベルの成果及び集団レベルの成果に及ぼす影響を詳細に検討することができたため,基本的な研究目的は達成できたと考える。縦断調査は調査対象者の負担を考慮して実現に至らなかったが,その反面,当初予定していたよりも多くのデータと客観的な集団生産性評価が得られたことによって踏み込んだ分析が可能になったため,総合的には(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,主として分散型リーダーシップ構造の成立過程に関して不足した知見を補いつつ,分散型リーダーシップの成立から集団に及ぼす影響までを説明する統合モデルを構築する。なお,当初予定していた共有型リーダーシップ構造の成立過程と有効性に関する検討は,実在集団において共有型リーダーシップの存在が非常に少なかったため,場合によっては年度内の解明が困難となる可能性がある。その場合は,分散型リーダーシップの成立過程や有効性に関する統合モデルの構築に集中するが,その際,当初の予定に加えて,有効な機能分担のあり方にまで踏み込んだモデルの構築を目指すこととする。
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Research Products
(2 results)