Research Abstract |
本年度においては,システム再生産に寄与する心理メカニズムとして,A)システム正当化動機とB)文化的世界観防衛動機を取り上げ検討した A)に関わる研究として,システム脅威が社会的役割に応じた相補的ステレオタイプの適用を強めるかを複数の実験を行い検討した.独立変数として,日本のシステムの脅威となる外集団の顕現性を操作して,従属変数として職業学歴ステレオタイプの適用を測定した.結果として,外集団が顕現化すると,「有能だが冷たい」という官僚ステレオタイプ,「学力は高いが社会スキルが低い」という高偏差値大学生ステレオタイプと「学力は低いが社会スキルは高い」という低偏差値大学生ステレオタイプ,の適用が強まることが見いだされた.これらの結果は,社会的地位に応じた相補的ステレオタイプが,システム正当化に寄与することを示唆している B)に関わる研究として,死すべき運命を顕現化すると文化的世界観防衛動機が高まることを利用して,文化的世界観防衛動機が高まったときに外国人偏見が強まる状況と強まらない状況の同定する実験を行った.独立変数として死すべき運命の顕現化(有vs.無)と文化的規範(日本規範vs.博愛規範)の活性化を操作し,従属変数として日本人大学生と比較した外国人留学生に対する評価を測定した,結果として,死すべき運命を顕現化しているときに,日本規範を活性化すると,外国人偏見が強まるが,死すべき運命が顕現化していても,博愛概念を活性化すると,外国人偏見が強まらずむしろ低下することが見いだされた,この結果は,心理的に依存しているシステムに関わる規範が複数あるとき,ある特定の規範に注目させることによって,従来指摘されていた偏見による文化的世界観防衛が抑えられる可能性を示唆する
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