2011 Fiscal Year Annual Research Report
交渉相手の感情と解読者の行動:情動知能と動機を用いた自動/戦略ルートの解明
Project/Area Number |
22530682
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐々木 美加 明治大学, 商学部, 准教授 (90337204)
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Keywords | 交渉 / 感情 / 情動知能 / 感情解読 / 宥和 / 戦略 |
Research Abstract |
本研究では、交渉相手の感情がその解読者の行動に影響する過程、すなわち交渉における感情の対人的影響を実験的に検討する。この対人影響過程のうち、表出された困惑が解読者の譲歩を促進する効果は、宥和研究で本能的な自動反応と考えられている。一方、交渉研究では、相手の怒りが解読者の譲歩を促す現象は、解読者の戦略的行動として捉えられている。本研究では、これらの自動/戦略ルートの両者を統合的に理解する枠組みを構築する事を目的として実験を行った。 実験では、仮想状況での交渉相手の発言をDVDで視聴し、実験参加者の交渉動機と情動知能、感情解読(相手の感情を参加者が解読)を測定した。交渉相手の感情を解読することで、戦略的に行動しようとするのか、あるいは戦略なく行動しているのかを明らかにしようとした。交渉動機の測度は昨年度同様高い信頼性が得られたが、情動知能の尺度IEIS(Sasaki,2010)に信頼性が低い下位尺度が見られた(α=.44)。IEISの尺度としての妥当性を高めるため、情動知能の項目44項目について、800人を対象にweb調査を行った。その結果、感情解読7項目(α=.90)、自己表現3項目(α=.81)、対人調整3項目(α=.75)の3因子構造を得た。 新しい情動知能の尺度を用い、仮想状況の交渉相手の動画を呈示する実験を行った。実験刺激の呈示は、DVDではなくビデオ・ストリームをweb上で呈示する形式に変更した。というのも、DVDを用いた実験では、実験参加者の動画視聴が確認できなかったので、web実験では動画視聴後しか質問の回答に進めないような設定とした。実験自体は実施済みであるが、震災の影響で遅れが生じ、現在分析中である。感情の対人的影響を明らかにするためには、実際に感情を表す動画を呈示する実験を行うことが必要であり、その影響過程における情動知能の役割を検討するためにも尺度の信頼性を高めることは重要だ。こうした地道な実験の積み重ねで感情の対人的影響の理論的に統合を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度末、東日本大震災が勃発し、その影響により数週間研究棟に入校できない日が続き、研究を行うために必要な物品やデータなどを持ち出すことができなかった。また、震災の影響で、揺れが続き学年暦が1カ月遅れたことにより、すべての仕事が遅れて年度後半にしわ寄せがきた。また実験に用いた尺度の作り直し作業も必要となったため、実験の実施が遅れた。実験は年度内に終えたが、分析がややおくれている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題はおおむね順調に進んでいるが、当初計画していた実験のうち、DVD実験については、郵送法であったため時間がかかった上に、実験刺激に関する問題があった。具体的には、DVDの実験刺激を郵送した場合、実際に刺激を視聴したかどうかがわからなかったため、web実験によって、ビデオ・ストリームで刺激を呈示し、視聴後でなければ質問項目の回答ページに進めないような設定を取り入れた。これによってデータの汚れを防ぐことができると考えられる。この方法の変更により、準備やweb調査会社の選定や打ち合わせに時間はかかったものの、実験実施期間は1カ月から10日に短縮した。平成24年度もビデオ・ストリームを用いた実験を行う予定である。
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Research Products
(5 results)