2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530683
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大薮 泰 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30133474)
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Keywords | 共同注意 / 他者の経験知 / 実験者不在パラダイム |
Research Abstract |
東京近郊に住む1歳児とその母親106組を対象に、「実験者不在パラダイム」を用いて、実験者との玩具を介した共同注意的関わりが1歳児の他者の経験知理解に果たす効果を検討した。子どもの機嫌の悪さなどの理由から分析除外された対象は34組となり、残りの72組の母子を分析対象にした(14か月24組、18か月48組)。実験場所は早稲田大学文学学術院発達心理学研究室であった。実験は最初に、実験者の要請に対する子どもの玩具選択能力を確認するため<プレテスト>を行い、玩具選択が可能であった者を<本実験>の対象とした。<本実験>では3種類の手製の抽象的な玩具を使用し、【実験条件】と、【統制条件】を設定した。【実験条件】では、実験者が最初の2つの玩具を1つずつ子どもと共同注意しながら遊んだ(遊びの時間はいずれの玩具も約1分間)。3つ目の玩具は補助実験者が子どもと一緒に遊び、その間、実験者は退室した。補助実験者がこれら3つの玩具をトレーに置き、子どもの前に提示した。そこへ実験者が戻り、乳児の目を見ながら驚いた様子で「それ、ちょうだい」と言って手を差し出し、手渡すように要請した。【統制条件】では、実験者は3つの玩具すべてで子どもと共同注意しながら遊んだ。3つ目の玩具での遊びが終了したら退室し、補助実験者が3つの玩具をトレーに置いた時点で、部屋に戻り、実験条件と同様に玩具の手渡しを要請した。その結果、14か月児が手渡した3種類の玩具には偏りがなかった。しかし、18か月児では実験者が見ていない第3番目の玩具を手渡すことが有意に多かった。この結果から、14か月児では共同注意経験の有無が実験者(他者)の経験知(内容)の理解に有効な効果をもたないが、18か月児では有効になることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験に参加する母子の数が予想を上回り、実験が予定より早く進行したためである。これは、東京都各区の保育関係課や、幼稚園、保育園への参加者募集依頼が予想以とに有効に働いたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、予定より早く課題が達成されている。本実験はわが国では初の実験であり、従来の欧米での研究結果と共通する知見と相違する知見が得られている。こうした興味深いデータから、1歳児の他者の経験知の理解に影響する要因について、自己感や他者感の発達研究や比較文化的な研究の視点から考察を深め、仮説を見出し、今後の研究への展開への糸口を見出していきたい。
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Research Products
(1 results)