2011 Fiscal Year Annual Research Report
文化的スクリプトの獲得プロセスに関する研究:日中米の昔話とその伝達方法の比較
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22530689
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Research Institution | Komazawa Women's Junior College |
Principal Investigator |
向田 久美子 駒沢女子短期大学, 保育科, 准教授 (70310448)
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Keywords | 文化的スクリプト / 昔話 / 内容分析 / 語り / 比較文化 / 読み聞かせ / 幸福観 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、日本と西洋の代表的な昔話の内容分析を行った。今年度は「幸福観」に焦点を当てて分析したところ、西洋の昔話では「幸せとは困難を克服することによって得られるものであり、幸せになるためには個人の能動的行動が鍵となる」という幸福観が、日本の昔話では「幸せとは日々の行いや心がけによってもたらされるものであり、いつか消えてしまうはかなさを秘めたものである」という幸福観が基底にあることが示唆された。また、中国の昔話の内容分析も併せて行い、3文化比較を試みた。日中米とも、主人公が困難を乗り越えて幸せになるという物語が主流を占めていた。中国の昔話の特徴としては、日本と同様に恋愛エピソードは少ないものの、難局を乗り切る際の知恵や聡明さが強調されており、日本の昔話よりも主人公の主体性を感じさせる内容となっていた。これらの文化的特徴は、大学生の語りに見られる特徴(日本の"川の流れ"パターン、中国の"山道"パターン、米国の"ハッピーエンド"パターン)と連動しており、昔話が文化的スクリプトの源泉の一つとして機能していることがあらためて示唆された。 さらに、保育現場での読み聞かせの予備調査として、杉並区の保育園と幼稚園で読み聞かせの様子を観察し、保育者へのインタビューを行った。昔話の読み聞かせについては、園によって実施に差があるであろうこと(昔話よりも、創作絵本や童話、アニメのキャラクターが登場する物語のほうが好まれることもある)、保育者の読み聞かせについては情緒面を強調した語り(悲しい場面で悲しそうな表情を作るなど)が特徴的であることが示唆された。本年度は日本の保育施設について集中的な観察を実施するとともに、中国・アメリカの保育施設での実践についても調べ、文化的スクリプトが個人に内化されるプロセスとしての、保育者の読み聞かせの効果について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昔話の内容分析と比較文化についてはかなり進んだものの、保育現場での予備調査の実施が日本のみにとどまった。当初は中国とアメリカでも予備調査を行う予定であったが、年度の後半に体調を崩してしまい、実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き昔話の収集と内容分析を続けるとともに、成果を国内外の学会で発表する。また、中国とアメリカの保育施設でのインタビューと読み聞かせの観察が円滑に実施できるよう、現地の研究協力者と緊密に連絡をとりながら計画を進める。
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Research Products
(2 results)