2012 Fiscal Year Annual Research Report
児童・生徒の概念的理解を促進する教科学習の展開とその教育心理学的評価
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22530695
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤村 宣之 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20270861)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 教育系心理学 / 概念的理解 / 教授・学習 / 概念発達 / 教育評価 / 探究学習 / 協同 / 教科学習 |
Research Abstract |
本研究では,児童・生徒の概念的理解を促進するために,小学校から高校に至る複数の教科で「協同的探究学習」による授業を継続的に実施し,その学習のプロセスと効果を教育心理学的に評価する。 1.中学・高校生の概念的理解の向上をめざした授業の実施と効果の検証 中高一貫校の国語,理科,数学の各教科で,①生徒の多様な考えを喚起する発問,②多様な考えを比較検討する集団討論,③個人が理解を深める個別探究の3点の特徴をもつ「協同的探究学習」を組織し,プロセスと効果を心理学的に評価した。プロセスに関しては教師の発問と生徒の行う説明の関連を分析し,国語科では主題に関する多様な追究を促す発問が,理科では実験結果についての多様な考察を促す発問が,黒板を集団思考の場として共有することを介して,多様な知識を関連づける各生徒の説明につながることが発話やワークシートの記述の分析から示唆された。効果に関しては,日常的事象に関連づけて自身の考えを展開させる自由記述型課題を理科の単元の開始時と終了時に実施し,各生徒の記述内容の変化を分析することを通じて,記述量は必ずしも増加しないが概念的理解の水準には深化がみられることが示唆されている。 2.小学生の概念的理解の向上をめざした授業の実施と効果の検証 小学校の国語科で「協同的探究学習」による授業を低・中・高学年で継続的に組織した。発話やワークシートの分析から,①文章中の記述に依拠した心情や主題の推測,②多様な推測の関連づけ,③協同探究後の発展的発問が,心情の変化や作品の主題に関する概念的理解の向上(文章全体を考慮した理解の深化)を促すことが示された。また小学校の理科における「協同的探究学習」による授業では,①以前に行った実験結果や日常経験に依拠した結果の予測,②多様な予測とその根拠の関連づけが,各児童の因果的説明の生起を促進し概念的理解を深化させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「協同的探究学習」による授業が小学校から高校にいたる複数の教科で実施され,その学習方法の改善や精緻化が年次進行ではかられてきている。またその授業の効果を概念的理解の視点で測るための自由記述型課題や授業時の導入・展開課題も開発・実施され,児童・生徒の記述内容をもとに,その分析基準が検討されている。
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Strategy for Future Research Activity |
小学生から高校生を対象とした「協同的探究学習」による授業を継続的に実施し,抽象度の高い学習内容を含めた概念的理解を評価するための記述型課題や授業時の導入・展開課題を複数教科において開発・実施し,児童・生徒の記述内容の分析基準を明確化することにより,授業の効果をより多面的・客観的に評価する。
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