2010 Fiscal Year Annual Research Report
特異的言語発達障害児等の補助ストラテジーに関する心理言語学的研究
Project/Area Number |
22530696
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
伊藤 友彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40159893)
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Keywords | 特異的言語発達障害 / 補助ストラテジー / 心理言語学 / 発達性読み書き障害 / 吃音 |
Research Abstract |
我が国において研究が遅れており、指導法の開発が急務となっている言語の障害として、特異的言語発達障害(以下SLI),発達性読み書き障害、吃音がある。これらの障害がある子どもたちは、その障害を補うために自ら工夫した独特の方略(以下、補助ストラテジーと呼ぶ)を用いることが知られている。しかし、補助ストラテジーを研究対象として体系的な研究を行い、それを手がかりとして障害メカニズムや指導法の開発に取り組んだ研究は筆者の知る限りない。本研究の目的は、SLI、発達性読み書き障害、吃音、の子どもたちがそれぞれ用いる補助ストラテジーの特徴を心理言語学の知見を用いて明らかにすることである。 今年度はSLIについてはアスペクトに視点をあてた。英語圏等ではSLI児はアスペクトの獲得に困難を示すと言われている。対象児は5年以上にわたって我々が縦断研究を行ってきた15歳の女児と11歳の男児であった。本研究の結果、日本語を母語とするSLI児もアスペクトの獲得に困難を示し、文完成課題においては、過去を示す副詞等に着目した独特の補助ストラテジーを用いることなどが明らかになった。この研究結果はオスロで6月に開催された国際学会(The 13^<th> Meeting of the International Clinical Linguistics and Phonetics Association)で発表した。この学会での発表を中核とした論文がAsia Pacific Journal of Speech, Language, and Hearingに掲載された(Ito, et al., 2011)。発達性読み書き障害との関係では、日本語を母語とする幼児が、読みが未熟な段階で行う逐字読みに着目し、逐字読み段階の幼児の読みは、アクセント型の影響を受けることを明らかにした。吃音については、音声移行が発話の困難さに有意な影響を及ぼすのは語頭音節のみであり、2音節以降は有意な影響を及ぼさないことを明らかにした。発達性読み書き障害と吃音についてのこれらの結果はいずれも上記の国際学会で発表された。逐次読み段階の幼児の読みについての発表は前述の雑誌に掲載された(Sakono, et al., 2011)。
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Research Products
(5 results)