2011 Fiscal Year Annual Research Report
特異的言語発達障害児等の補助ストラテジーに関する心理言語学的研究
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22530696
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
伊藤 友彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40159893)
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Keywords | 特異的言語発達障害 / 補助ストラテジー / 心理言語学 / 発達性読み書き障害 / 吃音 |
Research Abstract |
本研究の目的は、我が国において特に研究が遅れており、指導法の開発が急務となっているSLI、発達性読み書き障害、吃音、の子どもたちがそれぞれ用いる補助ストラテジーの特徴を心理言語学の知見を用いて明らかにすることである。本研究は3つのチームに分かれて行われている。今年度は各チームとも補助ストラテジーの産出を促す言語課題を実施することになっていた。各チームにおける本年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 1.SLI(特異的言語発達障害)チーム(伊藤・福田真二.福田スージー) SLI児2名の縦断研究を継続するとともに、国際学会において、SLI児に観察されたcreative errorsに関する報告を行った。さらに、この2名のうちの1名にみられた受動文獲得過程の補助ストラテジーに関する論文を学会誌に投稿し、掲載された。しかし、補助ストラテジーの産出を促す言語課題の開発はできなかった。 2,発達性読み書き障害チーム(伊藤・迫野) 国際学会においてフット(Foot)の構造が幼児の読みに及ぼす影響について報告した。また、日本の学会誌に、幼児の読みに及ぼす音節量構造の影響に関する論文を2本投稿し、いずれも掲載された。さらに、読みが未熟な幼児における非語の復唱の特徴について国内の学会で報告した。しかし、補助ストラテジーを引き出しやすい言語課題の作成までには至らなかった。 3.吃音チーム(伊藤.島守) 国際雑誌に吃音児の音声移行に関わる論文を投稿し、掲載された。また、国際学会において吃音児の発話や読みに及ぼす語の長さの影響について発表した。国内の学会では音声学的特徴の吃音頻度への影響について発表した。しかし、吃音児の補助ストラテジーを引き出す課題は作成できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの2年間の研究で、SLI児においては補助ストラテジーの研究がある程度進展した。しかし、それは、SLI児が自ら補助ストラテジーを言語化する場面に偶然遭遇したことによるものであった。SLI、吃音、発達性読み書き障害、それぞれにおける、補助ストラテジーの産出を促す言語課題の開発および実施はきわめて難しいことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの2年間の研究で補助ストラテジーの研究には方法論上の難しさがあることが明らかになった。そこで3年目の最終年度の研究では、補助ストラテジーの研究の方法論を検討する方向に進むのではなく、この2年間の研究で明らかになった研究成果を大切にしたい。この2年間の研究によって、SLIは文レベル、吃音、発達性読み書き障害は単語レベルの研究を中心に研究成果が蓄積されつつある。したがって、3年目では、それぞれの障害種における研究成果を語レベルと文レベルの処理の発達を中心にまとめ、それぞれの処理レベルにおける補助ストラテジーの考察を行って研究の仕上げとしたい。
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Research Products
(9 results)