2011 Fiscal Year Annual Research Report
非連続型テキストを含む文書の読解指導法に関する基礎研究
Project/Area Number |
22530697
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
岸 学 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40143622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 光伴 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (40352398)
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Keywords | 非連続型テキスト / 眼球運動測定 / 文書読解 / 図表 / 作業記憶容量 |
Research Abstract |
平成23年度の研究目的は,平成22年度に引き続き,テキストと非連続型テキストとの統合しながら読解する過程で,理解の程度に及ぼす要因を検討することであった。 研究成果の第一は,平成22年度の段階で作業記憶(working memory)の容量が理解に影響を及ぼす可能性が示唆されたので,読解呈示材料を変えて追実験を行い,影響を確認した。その結果,文書の中で非連続型テキスト部分を多く注視する者は作業記憶容量が大きい傾向がみられ,平成22年度の結果を検証することができた。このことは,読解指導を行う際に,テキストと非連続型テキスト部分双方の情報を統合する読み方の学習に程度差が生じることを示唆している。 成果の第二は,文書自体の要因について検討したことである。ここまでの研究では,個人の読みのパターン,作業記憶容量など,非連続型テキストの読解に及ぼす個人の要因に着目してきた。そこで,視点を変えて,非連続型テキスト側のどのような特性によって読解が影響を受けるのかを検討した。まず,個々の非連続型テキストがどの程度の量の情報を表現するかによって読みのパターンなどに影響するのかを検討した。その結果,呈示する非連続型テキストが,説明対象の全体を網羅するような図であるほど,読解による理解度が向上することも示された。さらに,テキストと非連続型テキストのレイアウトの違いによって,読みのパターンや理解度に影響するのかを検討した。その結果,理解度への影響はみられなかったとともに,レイアウトの影響は限定的であり,個人の読みのパターン(図表中心・文章中心)の一貫性の高さを確認することができた。 これらの成果は,読解指導における教材の作り方に関して,基礎情報を提供することができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究によって,非連続型テキストを含む文書を読解する際に,読解の程度を規定する要因を相当程度明らかにすることができた。具体的には,個人要因としての読みパターンと作業記憶容量,文書自体の要因としての情報量やレイアウトである。この点で,研究目的の達成に向けての進行が見られると自己評価した。ただし,児童を対象とした指導研究は未だ着手できず,実施は最終年度に持ち越しとなった。この点が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては,これまでの研究成果について,児童を対象とした指導介入研究によって発展させることにある。しかしながら,児童を対象とした眼球運動測定という個人研究の実施は,予想されたことであるが,小学校において極めて実施が困難であり,平成23年度は実施できなかった。したがって,その対応策として,学校以外の場面で,両親を対象に,児童の研究協力者を募り,少しでも対象者数を拡大させていくことを目指している。具体的には研究分担者のPTA関係の知り合いに協力を依頼する作業を始めており,最終年度には研究が実施できると思われる。
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Research Products
(5 results)