2011 Fiscal Year Annual Research Report
教科学習における学習者の認知メカニズムに即した教材特性の解明と教材開発
Project/Area Number |
22530698
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
進藤 聡彦 山梨大学, 教育学研究科, 教授 (30211296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
麻柄 啓一 早稲田大学, 教育総合科学学術院, 教授 (40134340)
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Keywords | 教授・学習過程 / 教材の実体化 / 知識操作 / 問題解決 |
Research Abstract |
本研究の目的は学習者の認知メカニズムに即した教材特性を解明し、そうした特性を具備した教材開発を行うことであった。そのための視点として、1.教材の実体化、2.知識操作の2点から研究を進めた。 1に関して実体性とは学習者にとっての教材の意味や表象のつくりやすさを指す概念である。本年度行った実験では相似形の面積比に関する誤概念を取り上げた。すなわち、昨年度の研究で大学生でも辺の長さがk倍になると面積もk倍になるという誤概念をもち、当該誤概念の修正のためには辺をk倍に変化させることに意味がある実体性の高い教材が有効であることを確認している。その際、平面よりも立体の変化の場合の成績が高かったことから、本年度は図形の次元への着目促進による誤りの修正を試みるために立体を先行提示し、平面に移行することの効果を明らかにしようとした。高校生を対象にした実験結果は、そうした処遇の効果は天井効果のため明確に確認されなかった。なお、前年度の実体性に関する研究は「面積比の理解に及ぼす操作結果の実体化の効果」というタイトルで教育心理学研究誌に掲載された。 2に関して「知識操作」とは一般化された知識(p→qと記述可能なルール)を理解したり、問題解決に適用しやすくするために当該知識を変形することである。実験ではDunckerの放射線問題を取り上げ、放射線問題を従来のアナロジー研究の視点からでなく、問題解決に必要な知識をルール化し、そのルールの操作によって解決が促進されるのではないかという観点から分析を行った。その結果、知識操作の効果は限定的であり、放射線問題のようなルールを直接的に適用できない問題の解決には、知識の写像の要因の寄与率が高いことが示唆された。この実験については、「ルール適用における操作活動の効果-Dunckerの放射線問題に即して-」というタイトルで大学の紀要にまとめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験も含めて5つの実験を行い、研究課題に関する多くの知見を得た。また、そうした実験から新たな問題も見出すことができた。それらの成果を学会機関誌と大学紀要各1編にまとめられたのも成果である。その一方で、仮説を支持する結果が得られなかった実験もあり、この点では問題が残された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は教育実践に直結し得るものであり、今後も学習者の認知メカニズムに即した教材特性を、教材の実体化および知識操作の観点から解明する研究を進めたいと考えている。既に実施した研究や予備調査から新たに解明すべき興味深い問題を見出しているので、研究計画を整備して本実験を実施する予定である。
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