Research Abstract |
本年度は,3年間の縦断的発達研究を進める目的で,初年度として以下のとおり実施した。まず新見・前田(2009)のキャリア意識尺度の一部を改良してキャリア意識尺度改訂版を作成し,小学5年生,小学6年生,中学1年生,中学2年生,中学3年生を対象に初年度のキャリア意識の発達状況を調査した。次に,キャリア意識の調査と同時に,これらの児童生徒を対象にして保護者からの発達期待,適応感(自己肯定感,学習効力感,学校満足感)および生活価値観に関する調査を実施した。小学生のキャリア意識の横断的な発達を検討した結果,小学5年生が6年生よりもむしろ得点が高い傾向にあり,通常の発達傾向に反する結果を示した。この結果は,小学生の一部の分析結果によるものであり,今後は他の小学校のデータを分析して,結果の一般性を検討する予定である。また,中学生の横断的な発達傾向についても,詳細に分析する予定である。横断的な発達データに基づいて小学生のキャリア意識と適応感(自己肯定感,学習効力感,学校満足感)の関連を検討した結果,キャリア意識の高い小学生ほど,自己を肯定的に捉えていること,勉強に対する自信があること,学校生活に満足している関係にあり,キャリア意識が肯定的な適応と関連することが確認された。次年度からは小学生から中学生にかけて同一児童生徒を追跡調査して縦断的発達データを収集し,キャリア意識の縦断的な発達プロセスを明らかにするとともに,キャリア意識の関連要因(学業効力感,学校適応感,道徳意識等)との関連についても発達的に検証する予定である。
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