2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530723
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
外山 紀子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (80328038)
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Keywords | 認知発達 / 知識獲得 / 生気論 / 素朴理論 / 素朴生物学 / 食事場面 / 概念形成 / 保育園 |
Research Abstract |
22年度は(1)保育園の食事場面の観察と,(2)3~5歳児に対する個別インタビュー実験を実施した。(1)は食と健康・病気について社会的に与えられる情報を明らかにすること,(2)は幼児の理解を明らかにすることが目的であった。 (1)食事場面の観察:都内3つの保育園の食事場面を合計32日,ビデオ観察した。先生が子どもに何かするよう指示する発話をとりだし,指示内容と指示の際の説明形式を分析した。内容については,マナー(皿の持ち方,すわり方)・摂食(残さない,よくかむ)よりも,衛生(手を洗う,落ちた食べ物は拾わない)に関する指示が多く,説明形式については理由を付さない指示(~しなさい,~はだめ)が過半数以上を占めていた。生物学的根拠を付した指示はごくわずかだった。生物学的根拠を付すとしても入出力関係だけを述べた説明(汚い,病気になる)が多く,媒介メカニズムについてはほとんど説明がなかった。ただし,「元気がなくなる」「力がでない」等,生気論的説明が認められる場合もあった。 (2)幼児の理解:3歳児22名と5歳児26名に対して,食事時に衛生習慣を守らないことがなぜ病気につながるのかを説明してもらった。課題文中には汚染に関する言及は無かったものの,3歳児の60%以上,5歳児のおよそ90%が,衛生習慣の不履行が汚染を引き起こし,それが病気につながるという説明を産出した。その説明において「ばい菌」は「大きくなる」とか「死ぬ」といった生物学的特性をもつものとして描かれていた。その「ばい菌」が「元気」や「力」を奪った結果,病気になるのだという説明が一定程度認められた。 (1)と(2)を単純に比較することはできないが,(2)で得られた幼児の説明は,(1)で観察された保育園の先生の説明より精緻で詳細なものであり,幼児の理解は社会的に与えられる情報を上回ることが示された。このことは生物学領域における知識獲得を促す何らかのバイアスを示唆している。
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