Research Abstract |
23年度は,(1)保育園の朝の会の観察と,(2)幼児に対するインタビュー調査,(3)大学生に対する質問紙調査を実施した。 (1)朝の会の観察 都内多摩地区の保育園の3~5歳児混合クラスについて,朝の会を計24日間,観察した。保育士は,朝の会を利用して,病気や衛生習慣(手洗い・うがいなど)を守る重要性などを説明することが多かった。病気を予防するために何をすればよいか,病気になるとどのような身体症状がみられるかといったことから,食や睡眠習慣との関連性まで,説明内容は多岐にわたっていた。その際,「元気」や「パワー」など,生気論的概念を用いることが多かった。 (2)幼児に対するインタビュー調査 年中児(4歳児)18名,年長児(5歳児)21名を対象とした個別インタビュー調査を実施した。質問項目は,朝の会の観察で得られた保育士の発話を踏まえ,病気の原因や予防,治療法に関する考え方,そして病気と食・睡眠習慣との関連性とした。幼児は,社会的に与えられる情報を理解しているだけでなく,未知の状況について予測を求める質問に対しても,生物学的にみて適切な推論を行うことが示された。 (3)大学生に対する質問紙調査 大学生265名に対する質問紙調査を実施した。食と健康のつながりとして,食べ物の汚染と病気に関する理解をとりあげた。2011年3月11日の東日本大震災以降,放射能汚染に関する報道があいついでいることから,放射能汚染のメカニズム,内部被曝,外部被曝,除染等の概念についても質問した。連日のように多くの情報にさらされているにもかからわず,大学生の理解はかなり曖昧であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度当初に計画していた,朝の会の観察,幼児のインタビュー,大人に対する質問紙調査を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
生起論的因果は,食物摂取に関する理解を核として形成されるのではないかという考えにもとづき,本研究では,食と健康・病気との関連性をとりあげている。東日本大震災以降,食べ物の放射能汚染について,多くの関心が寄せられており,子どもたちもまた,家庭や学校のみならず,メディアを通じて,多くの情報にさらされている。24年度は,食べ物の汚染に関する理解として,従来検討されている毒等の汚染源だけでなく,放射能汚染をとりあげ,そのなかで,生起論的因果の果たす役割を検討する予定である。
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