2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22530723
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
外山 紀子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (80328038)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生気論的因果 / 素朴生物学 / 知識獲得 / 概念変化 / 因果推論 / 食事場面 / 病気に関する理解 / 食べ物の汚染 |
Research Abstract |
24年度は,2つの調査を行った。 (1)食と健康・病気に関する理解 汚染された食べ物の摂取が身体症状を発症させるメカニズムに関する理解を検討するために,小学5年生46名・中学2年生53名,大学生83名に対する質問紙調査を実施した。3タイプの汚染源(生物種・物理的物質・放射性物質)によって汚染された食べ物を摂取した場面を提示し,身体症状が発症するまでにどの程度の時間がかかるか,年齢・性別・免疫力によって発症の仕方に相違があるか,煮沸などの除染方法はどの程度効果をもつか判断してもらうと同時に,理由説明を求めた。その結果,小学生よりも中学生・大学生の方が精緻な説明を産出したが,判断そのものには年齢差がみられなかった。大学生になっても,汚染された食べ物の摂取と身体症状の発症についてはあいまいな理解しか得られていないことが示唆された。東日本大震災以降,放射性物質による汚染については多くの報道がなされているものの,大学生ですら,放射性物質に関する基本的概念を正確には理解していなかった。また,生気論的概念は多義的な意味合いをもつものとして使われており,このことは本調査で対象とした範囲では年齢差が認められなかった。 (2)食事場面における乳幼児と大人のかかわり 乳幼児と母親の食事場面を観察したデータに基づき,母子がどのような調整過程を経て,食べ物を食べる-食べさせるという協調作業を遂行しているのかを明らかにした。母親の発話を分析した結果,食物摂取の意義を説明する際,母親は生気論的概念(元気や気,パワーなど)にしばしば言及することが示された。ただし,(1)同様,生気論的概念は身体的なエネルギーだけでなく,心的エネルギーを指すものとして使われており,きわめて多義的,心身相関的だった。これらの特徴は,保育園の食事場面における保育士の発話にも認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食べ物の汚染,身体症状の発症に関する理解を検討するための質問紙調査・実験のデータ収集をほぼ終えた。また,家庭および保育園の食事場面の観察データ,保育園の朝の会の観察データの収集にもめどが立った。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度までに,データの収集をほぼ終えることができたので,最終年度である25年度は,補足のインタビュー調査とデータ分析を行い,4年間の研究を総括し,生気論的因果の発達プロセスを考察する予定である。
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