2011 Fiscal Year Annual Research Report
児童・生徒を支援するための「適応度診断と介入」検査の開発と応用
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22530727
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
今川 峰子 中部大学, 現代教育学部, 教授 (10123283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三島 浩路 中部大学, 現代教育学部, 准教授 (90454371)
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Keywords | 自己開示・親和得点 / 同調得点 / 友人関係の4つのタイプ / 学級運営 / 学校満足度 / 介入の手だて / 心理教育的援助 / パーソナル・スペース |
Research Abstract |
『自分らしさを活かしてつき合う』と題した友人関係のアセスメントと介入に役立つ検査の予備調査を小学5年生と中学生2年生の192名に実施した。予備調査の目的は項目の信頼性や妥当性を検討し、調査協力者への倫理的配慮等を含めて検討するためである。結果は平成23年度の日本教育心理学会大会と中部大学現代教育学部の紀要論文に掲載した。自己開示・親和得点は男女ともに中学2年生の方が小学5年生より高く、逆に同調得点は中学2年生が低い。支援が必要な児童生徒を、学校満足度・担任教師とのパーソナル・スペース(以後PS)を加えて「友人関係の分布図」を作成し各担任と検討した。調査項目やPSの例示等に修正を加え、本調査(小学4年生~中学3年生の約1800名)を平成23年1月~2月に実施した。簡単な分析結果は平成23年の3月に、全調査協力校に送付した。 平成23年度は「友人関係の分布図」に親子関係・学校満足度・担任教師とのPSを加えて、包括的な視点から分析した結果、担任教師の学級運営の影響が浮かび上った。このため、学級を1人の教師が受け持つ小学校の4年~6年の284名をクラス別に、教務主任と児童の実態・学級運営の困難さを詳細に検討した。友人との自己開示・親和得点は、小学6年生の方が小学4年生よりも高いが、4年生では学級運営が困難なクラスが多く含まれていた。学校満足度・担任教師とのPSを加えた「友人関係の分布図」は、学級運営が困難なクラスほど支援が必要な非協調・孤立児が多い。その上に、学校満足度も低く、担任教師とのPSも離れていた。また、同調・ジレンマ群の児童は教務主任からは発見されにくい点も浮き彫りにされた。結果は2011年度の日本学校心理士会年報第4号の実践論文に採択され、現在印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予想通りに研究は進めてきている。予備調査を実施し、本調査を実施した上で、支援が必要な児童・生徒の内、平成23年度は、特に児童に焦点を当てて包括的な視点から教務主任と集中的に結果を検討した。この結果、非協調・孤立群と同調・ジレンマ群で支援が必要な児童を検査上は特定することができたが、教務主任の把握と検査結果の相違点も分かってきた。特に同調・ジレンマ群の児童は学級の中では、孤立する、反抗するなどの表面的な問題を抱えていないため、発見されにくいことが把握できた。さらに担任教師の学級運営が友人関係にまで影響することがわかってきた。学級運営が困難なクラスでは自己開示・親和得点が低く、学校満足度得点も低い。しかも、非協調・孤立群で支援が必要な児童が多い。
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Strategy for Future Research Activity |
『自分らしさを活かしてつき合い』と題した検査結果(小中学生1800名)について、検査の信頼性・妥当性を検討し、学校現場で利用できるようにすることを最終目的にしている。これまでは、友人関係・担任教師との関係・学校満足度を中心に分析を進めてきたが、父親・母親・養護教諭を加えて包括的な分析を試み、検査マニュアルを作成する必要がある。一般に、学校適応度等は家庭環境とも関係があると言われてきているが、父親・母親との自己開示・親和得点、同調得点から親子関係を詳細に分析して、友人関係・担任教師との関係を含めた包括的な視点から診断することを、現在試みつつある。この結果は平成24年度の日本教育心理学会に報告し、教育現場で利用できるような冊子として配布し、アセスメントを通して心理教育的援助に貢献したい。
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