2011 Fiscal Year Annual Research Report
専門家が用いるジェンダーセンシティブコミュニケーションに関する臨床心理学的研究
Project/Area Number |
22530732
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
奥野 雅子 安田女子大学, 心理学部, 准教授 (60565422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 啓三 東北大学, 教育学研究科, 教授 (70149467)
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Keywords | コミュニケーション / 専門家 / ジェンダー / 性差 / 心理臨床面接 |
Research Abstract |
本研究の目的は、専門家が用いるコミュニケーションにおいて性差やジェンダーを配慮した効果的な対応を明らかにすることである。臨床場面において専門家が患者やクライアントを支援する際に、性差やジェンダーの影響を考慮せずに解決を図ることは難しいことが指摘されてはいるが、それらに関する研究は少なく、さらにコミュニケーションに関する視点も不足している。そこで、本研究では、ジェンダーを生育歴で形成される固定的なものではなく、今ここに展開するコミュニケーションの中に表出されるものとして捉え、専門家が用いるジェンダー・センシティブ・コミュニケーションのあり方に焦点を当てる。当該年度では、専門家として5年以上の臨床経験を有する臨床心理士9名を対象に半構造化面接法でインタビュー調査を行った。前年度を含めて計17名のインタビューデータから臨床現場において直面する性差やジェンダーに関する問題を明らかにし、その問題解決に対する効果的な対応に関して質的検討を行った。グランデッド・セオリー・アプローチを用いた分析の結果、ジェンダーの問題には「セラピューティックな関係性」の側面と「話すトピック」の側面が存在し、それらの解決に関しては「会話内容」「セラピストとクライアントの関係性」「面接構造」のような、専門家と非専門家が形成するシステムにおけるミクロからマクロの各水準について具体的介入があることが示唆された。また、このようなジェンダーに関する問題への介入には、専門家が自らのジェンダー表現を活用して行うことになるといえる。専門家と非専門家が形成するシステムの各水準間で専門家によるジェンダー表現を変化あるいは逆転させることが効果的なコミュニケーションであることが帰納された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標とする被験者数が確保でき、半構造化面接によるインタビューデータが得られ、分析することができたと捉えている。それによって専門家が遭遇するジェンダーの問題を明確にし、それに対する効果的なコミュニケーションのあり方について、システミックな視座から、会話、関係性、面接構造といったミクロからマクロなシステムの各水準で示唆が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの質的検討をもとに量的検討を行う。専門家を対象に質問紙調査を行うことによって、専門家のコミュニケーションについてジェンダーの観点から尺度を作成する。さらに、専門家のコミュニケーションの効果を検討するために、患者やクライアントを対象に質問紙調査を実施し、専門家のコミュニケーションを評価してもらう予定である。しかし、患者やクライアントの性別や年齢によって異なる評価が得られることが推測されるため、ある程度対象年齢をしぼることを考えている。
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