2011 Fiscal Year Annual Research Report
困難な感情体験と感情調整の問題への心理療法的介入の効果
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22530734
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岩壁 茂 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (10326522)
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Keywords | 心理療法プロセス研究 / 感情調整 / アナログ研究 / 質的研究 |
Research Abstract |
本年度は、3つの異なる方法を用いた研究を並行して進めた。一つは、昨年度に引き続き過去の対人的恥による傷つき体験を変容し、感情調整力を高めることを目的とした全3回からなる試行カウンセリングを7名のデータ分析を行った。成果を上げた4ケースと成果が上がらなかった3ケースのプロセスを比較し、恥体験の解決とかかわる4つのステップ(共感的肯定、感情の喚起と認証、感情にとどまり調整する、完了と肯定)を明確化した。また、感情を扱っている場面におけるクライエントの主観的体験とこれらのステップのつながりを分析している。 次に、感情調整を扱うことを治療目標として挙げるAccelerated Experiential Dynamic Psychotherapy(加速化体験力動療法)の臨床家にインタビューを実施し、感情を扱う作業のプロセスとセラピストの継続訓練について尋ねた。データは、現在分析中であるが、感情を扱う作業は「技法的」な工夫という面よりもむしろセラピストの体験に深く関わっていることがわかった。また、セラピストが自身の感情体験を訓練または個人療法において扱うことが重要な役割をもっていた。 実際の心理療法3事例から取り出した9セッションで感情調整を扱っている場面を抜き出し、プロセスの分析を行っている。この分析から、強い陰性感情の表出からはじまり、中核的感情の表出と体験へと至るプロセス、心理教育を通したスキル学習、陽性感情の喚起とその体験から起こるプロセスを同定した。いずれのケースにおいても、この3つが組み合わされていた。 本研究から感情調整を高める介入の基本的な要素とその流れが明らかになりつつある。また、セラピスト、クライエント、観察者から得られたデータのトライアンギュレーションを行っているのも本研究の意義である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なるデータ(アナログ研究、インタビュー研究、実際の臨床ケース)から異なる方法(インタビュー、尺度データ、第三者評定データ)のデータが集まりつつある。また、分析の一部は国際大会で発表し、平成24年度も発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、セラピストとクライエントへのインタビュー、心理面接の逐語などをもとにした質的分析がかなり多くある。これは時間がかかるため、研究補助員の協力を得て効率的に行いたい。また、質的分析・量的分析を統合するための枠組みを定めるのも本年度の目標である。感情調整に関する心理療法的介入を行っている研究者は国内に少ないため、積極的に海外の研究者との打ち合わせはデータ面での協力を得たい。
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Research Products
(8 results)