2010 Fiscal Year Annual Research Report
青年期高機能広汎性発達障害者の自己形成をめぐる葛藤に関する発達臨床的研究
Project/Area Number |
22530742
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
木谷 秀勝 山口大学, 教育学部, 准教授 (50225083)
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Keywords | 青年期高機能広汎性発達障害 / 自己形成をめぐる葛藤 / アスペルガー症候群の大学生 |
Research Abstract |
今回の調査研究では、継続的に調査している青年期HFPDD(継続群)が7名(女性2名)、新たに青年期以降に支援を初めたHFPDD(新規群)が6名(女性2名)を対象に調査を実施した。その結果、継続群では、以前の平成18・20年度の調査結果と比較して、WAIS-IIIでは、言語性・動作性・全検査IQがすべて高くなる特徴が見られた。特に、言語性項目では、「単語」と「理解」が高く、それに続いて「算数」と「数唱」も高い傾向が見られた。動作性項目では、「行列類推」と「符号」が高くなる特徴が強い。 一方新規群では、言語性項目では、「類似」と「単語」が高く、「算数」と「数唱」が低い特徴があり、動作性項目では、「完成」と「符号」が低く、「積木」と「行列」が少し高くなる傾向が見られる。以上の特徴から、継続群では、全体として状況判断や課題への迅速さと言語表現の伸びが安定感に関係しており、一方新規群では、初期緊張、抑うつ傾向、強迫性のリスクが潜在的に高い状態であることが示唆される。 また、他の検査では特徴的な差異が見られないことから判断しても、青年期HFPDDの場合、柔軟性は有しても、基本的な状態像に大きな変化は見られない。しかしながら、学業もしくは就労等において志向性ある日常生活と周囲からの適切な支援体制の有無が、青年期HFPDDの安定感を維持・促進させる重要な要因の一つであることが考察される。 したがって、この点を詳細に検討するために、23年度の調査では、児童期から継続的に調査を行っている青年期HFPDD本人及び家族と22年度の新規群を対象として、適切な自己肯定感・他者とのアサーティブなコミュニケーション・進路や就労及び社会参加への能動性に関する意識調査を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)