2012 Fiscal Year Annual Research Report
瞑想に頼らない新しいマインドフルネスに基づく認知行動プログラムの提案と効果の検討
Project/Area Number |
22530746
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
伊藤 義徳 琉球大学, 教育学部, 准教授 (40367082)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | mindfulness / self-compassion / attntion / awareness / 居場所感 |
Research Abstract |
本年度は,2つのアナログ介入研究を含む3つの研究を実施した。 研究1と2は,self-compassion(SC)の可能性を見極めるため,大学生の居場所感の向上を目的とした研究を実施した。まず研究1として,大学生809名を対象に居場所感とSCの関連について調査研究を行った。その結果,両者の間には正の相関があり,階層的重回帰分析によってSCが居場所感の向上に寄与する可能性が示唆された。 この結果を受けて研究2では,居場所感の低い大学生8名を対象に,2週間/3セッションからなるSCトレーニングプログラムを作成し,その効果を検討した。プログラムは,SCの構成要素である1)mindfulness,2)common humanity,3)self-kindnessに焦点を当て,Gilbert(2010)などを参考に作成した。その結果,SCトレーニングは,居場所感の向上には影響を与えなかったが,SCの向上をもたらし,その効果は1ヶ月後follow-upにおいても維持されていることが明らかとなった。 さらに研究3として,マインドフルネストレーニングには瞑想訓練が不可欠なのか,あるいはマインドフルネスの構成要素である注意や気づきを高める要素が含まれていれば,同等の効果をもたらしうるのかを検討するため,従来の坐る瞑想を中心とした「瞑想群」,瞑想と同様の要素を持つがより現代の若者に受け入れられやすい「ヨーガ群」と,全く瞑想の要素を含まず,楽しみながら注意や気づきの涵養を目指す「レクリエーション群」の3群を設定し,3週間/4セッションからなるプログラムを作成して,精神健康が高くない大学生28名を対象に効果を検討した。その結果,3群はいずれもマインドフルネス傾向や認知機能の向上に寄与することが示された。 マインドフルネスを向上する多様なアプローチの可能性を検討することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年計画の本研究は,基礎研究からアナログ研究へと,着実に進展しつつある。 1年目は,マインドフルネスというモードの特性に関する実証的研究を2つ行った。その結果,心理教育に対する腑に落ちた理解が効果の鍵を握ること,マインドフルなモードの操作は,個人特性としてのマインドフルネス傾向の影響を受けることが示された。2年目は,この知見をさらに発展させ,腑に落ちる理解をもたらす要因について検討を行った。さらに,本研究では瞑想によらないマインドフルネス向上のキー概念として,self-compassionに焦点化することを特長としている。そこで,この概念を検討するために,尺度の作成を行った。さらにこれを用いて,Self-compassionという概念の特長を明らかにする実験研究を行った。 こうした研究をふまえて,今年度は先に示したようなアナログ研究を行った。Self-compassionについては,上記尺度を利用して,さらに実験研究の成果もふまえつつプログラムの開発を行った。さらにマインドフルネス向上のためのレクリエーションプログラムの開発に当たっては,特に指導者の指導訓練において過去2年間の研究の成果が生きたと言える。 このように,当初の計画通り,基礎研究から介入研究へと段階的に知見を蓄積している。研究の進展に対して,研究発表や公刊の部分で若干停滞が見られるが,研究の進行としては,概ね順調に研究は進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本研究計画の集大成と言える。上記のような3年間の知見の蓄積をふまえて,次年度は,患者対象のプログラムを作成し,臨床応用した場合のを検討する。これまでの知見を積み重ねたレクリエーションプログラムを作成し,入院患者に提供することで,入院生活の質の向上,マインドフルネスの向上,さらには治療的改善に寄与できれば幸いである。 推進に当たっては,医療機関との連携が必要となる。関連病院と連携をとりながら,入院病棟で週に1回90分程度の時間をもらうよう調整を進めている。入院患者や病院の形態から,疾患を固定することは難しいかもしれないが,広く入院患者を対象としながら,長期的にデータを収集できる見込みである。 その他,これまで蓄積してきた知見を発展させるいくつかの実証的研究も併せて行う予定である。
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Research Products
(8 results)