2012 Fiscal Year Annual Research Report
非行少年の被害経験が心理特性と非行性に及ぼす影響-被害経験からの回復を求めて-
Project/Area Number |
22530749
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
堀尾 良弘 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40326129)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 非行少年 / 被害経験 / 非行性 |
Research Abstract |
本研究は非行少年の生活環境における被害体験が心理特性と非行性に及ぼす影響を明らかにすることであり,被害からの回復を求めて更生の手がかりを探り,青少年の健全育成に資することを目的としている。 研究対象としては,非行少年と一般青少年の双方を対象とした調査研究を行うものであり,研究初年度(平成22年度)からの非行少年調査(第1次)に引き続いて,昨年度(平成23年度)一般青年調査(第1次)を実施した後に,本年度(平成24年度)においては非行少年調査(第2次)及び一般青年調査(第2次)を実施した。非行少年及び一般青年に対して家庭・学校・地域等の生活環境における様々な被害体験(例えば,虐待,いじめ,犯罪被害等)についての質問紙調査を実施した。ただし,心理臨床上のフォローの観点から,被害経験の調査項目は必要最小限にとどめた。また,堀尾(2001)が作成した無気力尺度(「厭世観」「失敗不安」「自信なし」の3因子構成・30項目の心理尺度)の調査についても実施し,被害経験と心理特性との関連を探った。とりわけ,本年度(平成24年度)の第2次調査においては,被害経験のエピソード記憶をもとに,その内実を質的にとらえようとする試みを行った。なお,当初計画していた郵送調査の回収率が低かったため,学校等の協力を得て高校生・大学生を対象とした一般青年調査を実施したことによって,謝金等の経費を低く抑えることができた。 調査の結果,被害の経験は一般青年よりも非行少年の方が被害経験が多く,被害時の感情反応も高くて不快感情を強く抱えていることことに加えて,被害経験の質の違いも明らかになってきた。非行少年は,被害を受けたことによって,被害感が加害性に転化し,非行性を高めていることが推測された。なお,調査対象の性別にまだ偏りがあるので,次年度に向けた補充的なデータ収集によって,より信頼性の高い分析をする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り昨年度(平成23年度)までに非行少年調査(第1次)及び一般青年調査(第1次)を実施し,今年度(平成24年度)は第2次に着手することができた。しかも,今年度の第2次調査においては,被害経験のエピソード記憶をもとに,その内実を質的にとらえようとする新たな試みに取り組むことができて,研究が進展した。これまでのところ,おおむね計画通りの行程で研究が順調に進展していると評価できる。なお,東北地方など東日本方面の調査については,震災の影響によって調査の実施を見送ったためデータ収集の対象が狭められているが,それに代わって東海地方での高校・大学等での学校関係の協力が得られたため大きな支障はない。 また,エピソード記憶の質的研究については,テキストマイニング・プログラムソフトを購入し,質的データの解析に着手している。これまでの量的データによる解析に加えて,質的データの分析を行うことによって,質量両面からのアプローチを進めており,広がりのある研究へと展開している。 なお,収集データに性別の偏りがまだあるため,来年度(平成25年度)は可能な範囲で補充調査を実施して,より信頼性の高い結果を得る必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究期間の最終年度であるため,研究成果のまとめを行うのが最重要課題である。ただし,前述したように,収集データに性別の偏りがあるため,可能な範囲で補充調査を実施する予定である。 また,昨年度の第2次調査で得られたエピソード記憶に関する質的データの分析についてより詳細に行い,量質の両面から総合的な分析を試みる。 なお,当初検討していた援助者の役割については,現時点で収集されたデータからは明らかな効果が見いだされていない。それは,実際,援助者の効果が十分表れていないためか,あるいは,データ収集の方法に何らか要因があるのか,その検討を進める必要がある。 研究成果のまとめにあたって,様々な研究情報の収集・整理やデータ分析の検討などを実施していくために,研究協力者の専門的な分析・助言等も加味しながら,今年度が最終年度でもあるため,できるだけ多くの研究会,学会等に参加して研究成果のまとめを進めながら,研究成果の発表を行い幅広く還元していくつもりである。
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