2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん患者のスピリチュアルペインと心理的援助-グループ療法を用いて-
Project/Area Number |
22530772
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
河瀬 雅紀 京都ノートルダム女子大学, 心理学部, 教授 (70224780)
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Keywords | 臨床心理学 / 癌 / 心理療法 / 実存的苦痛 |
Research Abstract |
我々は、がん患者286名に実施したニーズ調査を基に、実存的苦痛・スピリチュアルペインに焦点付したグループ療法プログラム(河瀬ら:がん患者 グループ療法の実際:金芳堂.2009)を作成した。本研究では、乳がん患者を対象にこのグループ療法プログラムを用いて有効性を確認するとともに、がん患者のスピリチュアルペインの構造をさらに詳細に明らかにし、個々の患者の心理特性や病期(初発、再発など)に応じたより有効な介入プログラムへと改善していくことを目的としている。 平成22年度にグループ療法実施に向けての実施施設の協力と倫理委員会の承認を得、平成22年度および平成23年度は、乳がん手術後1年以内の患者を対象にグループ療法の参加募集と実施(毎週1回・5週連続および終了4週後)を順次進めてきた。POMS短縮版、SELT-M、MAC、日本語Big Five尺度を評価尺度とし、また「人生の意味・目的」に関する8項目からなる文章完成法も用いた。さらに、スピリチュアルペインの構造を分析するために、グループセッション中の会話記録も行った。 これまでに実施した3グループから得られたデータを分析した結果、オーバーオールQOL(SELT-M)得点の改善についてグループ療法実施前後で有意傾向がみられた。また、MACをクラスター分析した結果、「前向きなコーピングをとる」群と「不安×絶望感×運命×回避のコーピングをとる」群の2群に分類された。そして、後者の群ではその得点が低いほど、SELT-Mの得点が改善しやすい傾向がみられた(p=.53)。しかしその他の評価項目については、有意差はみられず、今後対象者数を増やしてさらに分析を進めていく予定である。 なお、本グループ療法の内容は、毎日放送ニュース番組「VOICE」(H23年11月4日)で紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象者の募集は研究実施施設での治療内容や手術件数等により影響を受けるため、一定期間に研究に適合した必要数の対象者を集めることが容易ではなく、グループ療法実施のグループ数が予定よりも少なくなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
調査の対象者数が当初予定していた数に達しないとしても、研究への参加希望は継続的にあり、グループ療法も継続的に実施出来ているため、データの解析方法を工夫することにより、初期治療期にある乳がん患者については当初の主たる目的を達成することは可能と考えている。
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