2011 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス状況下での高敵意者の自律神経機能を改善するための心理学的介入技法の開発
Project/Area Number |
22530775
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Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
百々 尚美 大阪人間科学大学, 人間科学部・健康心理学科, 准教授 (70351707)
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Keywords | 敵意 / ストレス / 自律神経系 |
Research Abstract |
敵意とは攻撃性に関連するパーソナリティの1つの側面であり,敵意が認知と態度,怒りが感情の行動として弁別,定義されている。敵意の高い人は不快な感情を惹起した場面において,敵意の低い人よりも,副交感神経機能が低下傾向にあるため,一定時間経過した後も心臓血管反応の上昇が維持されたままにあることが実験で報告されている。同様のことが日常生活全般においても繰り返されるため,敵意の高い人はCADの発症リスクが高いと考えられる。敵意の高い人のメンタルヘルスを向上するには,彼らがストレスフルな事態に遭遇した時でも自律神経機能をコントロールするためのスキルを学習することが求められる。本申請研究は3つの研究によって構成されている。第I研究では,対人場面においてネガティブな言葉を言われるというストレスフルな事態を操作し,その場面での自律神経系機能の変化を測定する方法論を確立する。第II研究では,ネガティブな言葉を言われるというストレスフルな事態に遭遇した際の敵意の高い人にみられる特有な認知面・行動面を検討する。第III研究では,第II研究の調査結果をもとに介入プログラムを開発し,第I研究で確立した方法論のもとで介入効果を検討する。 H23年度は,実験的にポジティブ-ネガティブ感情,喚起感情を惹起する改訂版感情誘発語視聴覚提示リスト(AAVWL-R)の作成をし,実験室でのリスト視聴後の感情の変化を主観的評価にて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験的に感情を喚起させる有用性の高い道具として感情誘発語視聴覚提示リスト(Affective Audio-Visual Words List, AAVWL)(桾本・百々,2011)を開発し,その成果を検討してきた。しかしながら,AAVWLのポジティブ語リスト,ネガティブ語リストはいずれもポジティブ感情もしくはネガティブ感情のみに影響し,活気気分には影響が認められなかった。Russell&Carroll(1999)によると,感情はポジティブ-ネガティブ次元のみならず,喚起次元に分類される。そこでH23年度はAAVWLに喚起次元を組み込んだ改訂版感情誘発語視聴覚提示リスト(AAVWL-R)を作成し,その成果を検討してきた。計画ではここまでの作業はH22年度に終えている予定であったが,実験的に感情を喚起させる道具において主要な要素が欠けていたので,修正し,再度実験を行う必要があった。 そのため現在の研究の進捗状況はやや遅れている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的にポジティブ-ネガティブ感情,喚起感情を惹起させる有用性の高い道具として改訂版感情誘発語視聴覚提示リスト(AAVWL-R)を開発し,実験室にてそれぞれの言葉リストを視聴後に主観的評価を用い感情を表してもらった。その結果ポジティブ語高覚醒または低覚醒リスト視聴後にポジティブ感情が惹起され,ネガティブ語高覚醒もしくは低覚醒リスト視聴後にネガティブ感情が惹起された。覚醒度については,ネガティブ語高覚醒リストが最も覚醒度が高く,次にネガティブ語低覚醒,またはポジティブ語高覚醒リスト,次いで中性語中覚醒リスト,ポジティブ語低覚醒が最も覚醒度が低かった。この結果を踏まえ,H23年度は自律神経系の活動を検討する予定です。 AAVWL-Rにて,ネガティブ語高覚醒リストが覚醒度の高いネガティブ感情を惹起することが確かめられた後に,敵意の高い人とそうではない人において,リスト視聴時の交感神経機能,副交感神経機能の賦活に差異が生じるのか検討する予定である。
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