2012 Fiscal Year Annual Research Report
青年期女子の注意欠陥多動性障害(ADHD)への臨床心理学的アプローチ
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22530779
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
山下 京子 広島女学院大学, 文学部, 教授 (30330666)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教育系心理学 / 発達障害 / ADHD / 青年期 |
Research Abstract |
大学生女子を対象として、ADHDと、報酬系機能・実行機能との関連を探り、ADHDに特徴的な時間管理のまずさや不注意を取り上げ、大学においてADHDの学生をどのように支援すべきかを検討することを目的とした。 平成24年度では、大学におけるADHD学生の支援に注目し、ADHD学生が同じ障害を抱えている他者と交流することが、ADHD学生自身が自分の特性を理解し、肯定的に自己受容し、必要な支援を取捨選択できるセルフ・アドボカシー・スキルの習得につながると考えられることから、ピアの視点を取り入れた支援のあり方を提案した。まず、大学におけるピア・サポート活動の実践記録を整理し、その結果を『大学におけるピア・サポート活動のあり方についてー11年間のキャンパス・サポーター活動を通して』(山下,2012)として発表した。次に、ピア・サポート活動と、ADHDを含めた発達障害とその傾向のある学生を対象とした支援のあり方を関連付けて検討を加え、『ピア・サポート活動を通してみた発達障害とその傾向のある学生に対する支援のあり方』(山下,2012)として報告した。すなわち、発達障害やその傾向のある学生を対象とした、支援される学生が支援する学生でもある、もしくは支援される学生が支援する側に移行するようなピア・サポートのあり方として、学内外のボランティア活動を活用することが有効ではないかと考えた。その理由として、支援を必要とする人に対する最適な支援は、自分が支援を要する人であるというアイデンティティを形成するのではなく、自分も支援することができるという、より複合的なアイデンティティ形成を目指すものであり、このことが、発達障害やその傾向のある学生にとって、ソシャル・スキル向上につながると考えられることをあげた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ADHDと報酬機能、実行機能との関連については、先行研究の概観は終了し、大学生女子を対象とした実験・調査に入れる段階まで到達した。大学生ADHDと成人ADHDに質的な差があることや、ADHD特性の日常場面の現れ方に性差があることが、先行研究からも推察されることから、使用するチェックリストの選定にやや手間取っている。
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Strategy for Future Research Activity |
個人情報の保護と人権への配慮などに細心の注意を払い、今後の実験・調査を実施する必要がある。ADHDと診断を受けている学生はほとんどいないために、ADHD傾向のある学生を対象とすることになるが、学生相談の臨床場面では、様々な合併症状を訴える学生が多く、ADHD特性だけでなく、他の発達障害の特性をも視野に入れる必要が出てきた。
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